私が担当している患者さんのお孫さんが卒業旅行でアメリカに行く事になりましたが、
そのお孫さんはひどい花粉症の持ち主で、それを心配されたその患者さんから、
「花粉症って日本だけだろ?調べてくれんか?」
と、ご相談をいただきましたので、調べてみました。
花粉症は日本だけの悩みなのでしょうか?
海外に出れば花粉症に悩まされなくて済むのでしょうか?
世界の花粉症
花粉症は日本だけではなく、世界各国でも花粉症で苦しんでいる人は多いようです。
世界三大花粉症と呼ばれているものは、
・スギ花粉症:主に日本
・イネ科花粉症:主にヨーロッパ
・ブタクサ花粉症:主に北アメリカ
出展:トリップアドバイザー
それぞれの地域で花粉症の時期も違うようです。
出展:トリップアドバイザー
北米の花粉症
アメリカ
アメリカでは花粉症のことを”hay fever”とか”pollen allergy”と呼び、
全人口の15~25%ほどが花粉症に苦しんでいるという統計が出ています。
アメリカの花粉症で最もポピュラーなのは、世界三大花粉症のひとつブタクサの花粉症で、
スギの分布自体が少ないため、スギ花粉症は少ないようです。
特徴として、アメリカは広大な土地のため、アメリカ北東部とアメリカ西部のそれぞれの場所によって花粉が飛散する時期が異なり、
アメリカ北東部:8月上旬〜10月中旬
アメリカ西部 :4月上旬〜7月中旬
と、ほぼ半年にわたって、花粉症になるリスクが続くようです。
カナダ
カナダでは、4月から5月にかけて、オーク、ハンの木、樺、カエデ、スギ、ニレ、桑、ウォルナッツの木の花粉が原因で花粉症を発症する人が多く、
特に、オークの木が原因となる花粉症が最も多いようです。
特に、トロントやバンクーバーなど人口密度が高く暖かい気候の大都市に住む人の発症率が高いようです。
ハワイ(アメリカ合衆国)
ハワイでは、マンゴーの花粉症にかかる人が多いようです。
マンゴーの花粉が最も飛散する時期は3月から4月となっています。
グアム(アメリカ合衆国)
グアムでは、ヤシの花粉、豆科の花粉、マンゴーの花粉などで花粉症が出るようですが、
花粉の飛散量が少ないので、あまり強い症状は出ないようです。
南米の花粉症
アルゼンチン
アルゼンチンでは、春先(9~10月)や秋口(3~4月)には花粉症に悩む方もあります。花粉症の原因植物としてはプラタナスなどが多いようです。
ヨーロッパの花粉症
ヨーロッパ各地では、イネ科の植物とシラカバによる花粉症が知られています。
イネ科植物の花粉は5~8月初旬にかけて見られ、
シラカバの花粉は4~5月初めにかけてピークを迎えます。
ヨーロッパにはスギの分布がないため、スギ花粉による花粉症はほとんど無いようですが、
スギ花粉症の人はヒノキの花粉でも症状が出る事もありますので、注意が必要です。
ドイツ
ドイツでは、ヒノキもほとんど無いため、スギやヒノキの花粉症は無いようですが、イネ科植物の花粉症は多いようです。
イギリス
イギリスでは、ロンドンなどの都市部ではストリートの街路樹として、オークの木やプラタナスの木が植えられているため、5月下旬から6月にかけて、特に都市部での発症が多いようです。
また、3月から9月頃にかけて芝花粉などで悩む人の数が多いとのデータがあり、渡英してから初めて花粉症に悩まされる方も多いようです。
フランス
フランスでは、最も多い花粉症は西洋ヒノキ(糸杉)で、
春は3月頃から秋は11月頃まで様々な花粉症があるようです。
ポーランド
ポーランドでは、春から夏にかけては白樺やポプラに起因する花粉症が多発するようです。
カザフスタン
カザフスタンでは、山麓地域ではスギ・シラカバ・ブタクサと交叉抗原性を持った樹木が豊富です。
山に囲まれているアルマティでは、春先に花粉症が多発するようです。
ギリシャ
ギリシャでは、春先には松花粉症,ポプラの綿毛アレルギーが多発するようです。
イタリア
イタリアでは、2月下旬から9月にかけて、イネ科を筆頭に、ヨモギ、ブナヘーゼルナッツの木、オリーブの木で花粉症が出るようです。
スペイン
スペインでは、スギを含むヒノキ科の木々がありますが、日本に比べて花粉の絶対量が少ないので症状は軽いようです。
ブルガリア
ブルガリアでは、春から夏にかけてブナやヒノキなど多数の樹木の花粉が飛散するようです。
フィンランド
フィンランドでは、5月頃には白樺等の花粉飛散による花粉症を発症することがあるようです。
アフリカの花粉症
ジンバブエ
ジンバブエでは、毎年8月頃から春を迎えいろいろな花が咲き始めます。
当地を代表する樹木であるジャカランダに対するアレルギーも日本人の間で珍しくないようです。
南アフリカ
南アフリカ共和国では、国民の3割の人が花粉症に悩まされています。
主な原因植物はサイプレス(イトスギ)で、これ以外にも、雨季は沢山の花が咲き、乾季には土埃が舞うこともあり、1年を通して花粉症の恐れがあるようです。
アジアの花粉症
韓国
韓国では、スギなどのアレルギーの原因となる植物が少ないため、花粉症に悩まされている人は全人口の0.01パーセントほどしかいないと言われています。
台湾
台湾では、スギの木がほとんど存在しませんので、スギ花粉症は発症しませんが、ヒノキはありますので、ヒノキの花粉症は出るようです。
香港
香港では、気候的に杉の木が育たないのと、湿度が高いため、花粉があってもあまり飛ばないようです。
ネパール
ネパールでは、春先(2月から5月)はヒマラヤ杉などの花粉が舞います。日本でスギ花粉などでの花粉症がある方は症状が出るようです。
タイ
タイでは、スギやヒノキなどアレルギーとなる樹木がありませんので、樹木系の花粉症の症状は出ないようですが、稲や雑草系の花粉症が出る人は居るようです。
フィリピン
フィリピンでは、スギ花粉に限れば無いみたいです。
しかし、イネ等の花粉は存在するらしく、イネ花粉に反応してしまう方は要注意です。
シンガポール
シンガポールでは、杉などの花粉症はありませんが、マンゴーやココナッツの花粉で花粉症が出る人居るようです。
中国
中国では、杉の木が極めて少ないので、杉の木の花粉症例は極端に少ないと言われていますが、花粉症よりもPM2.5で気管支炎などが問題になります。
イスラエル
イスラエルでは、杉の自生は少ないですが、春にはオリーブ、秋にはブタクサの花粉が飛散し花粉症が発症するようです。
オーストラリアの花粉症
1年を通じて草木の花が咲き乱れ、いろいろな種類の花粉が舞っているので、いわゆる花粉症の人や花粉アレルギーある人は、あらかじめ対策を講じておくことが望ましいようです。
オーストラリアでは人口の26%近くが花粉症に悩まされていて、時期としては、9月から1月がピークで、
メルボルンではアカシア(ミモザ)、シーオーク、ニレ、デイジーなどが原因の植物とされています。
ロシアの花粉症
雪解け前後からハンノキ,4月下旬からは白樺の花粉が大量に飛散します。白樺アレルギー患者の中に,「口腔アレルギー症候群」といって果物(イチゴ,リンゴなど)を食べると口の中が腫れる方もいるようです。
海外での花粉症対策注意点
欧米人は、マスクをしない
欧米ではマスクをする習慣が無く、マスクをしていると、感染性の重症患者か犯罪者と間違われるようです。
このため、マスクも日本のようにどこにでも売っているわけではなく手に入りにくいので、
日本で準備して持って行った方が良いようです。
薬が合わない
海外の薬は、日本では認可されていない物質が含まれている可能性があり、効き目の度合いや反応の出方がわかりません。
現地で買った花粉症の薬が合わず、救急車で運ばれた事例もあるようですので、
日本で普段常用している薬を滞在日数分は持って行った方が良いようです。
また、薬の容量は体重で決まりますが、海外の方は日本人より体格が大きい人が多く、1錠の容量が多すぎる事があるようですので、
ピルカッターを準備しておき、現地で薬を買って服用する場合は、1錠の半分から3分の1ほどから飲み始める必要があるようです。
違う花粉でもアレルギーが出る可能性がある
花粉の種類でアレルギー症状は変わりますが、
樹木や雑草の名前が違っても、同じ種類の花粉ならアレルギーの反応が出ますし、
違う種類の花粉でも、新たなアレルギーが出て、症状が出るかもしれません。
医療保険がきかない
もし、症状が強くなったり、現地で買った薬が合わずに、
病院にかからなければいけなくなった時には、
医療保険はききませんので、実費となり、莫大な医療費を請求される可能性もありますので、
海外旅行保険などに入っておいた方が良いと思います。
最後に
なぜか、花粉症というと日本だけのものだとボンヤリ思っていましたが、
海外の方々も同じ人間ですし、アレルギーが出る植物も日本だけに生息しているわけではないので、世界中で花粉症が出てもおかしくはないですよね。
今回、調べてみて世界中の方々も日本人と同じように花粉症で苦しんでいるのがわかりましたが、
花粉症の症状が出ているのが、日本とは違う種類の花粉である事もわかりました。
日本では、かなり重い花粉症の症状が、海外に行ったらパッタリ出なくなったという方も居れば、
日本より症状が重くなったという方もいらっしゃいます。
これは、日本で花粉症の症状が出ている花粉と、
滞在先の花粉とが似ているかどうかで差が出ているのだと考えられます。
花粉症を持っていて、旅行や出張などで海外に出られる予定の方は、
自分の花粉症が、どの植物を原因としているのかをちゃんと調べて、
滞在先に、
「同じ植物が無いかどうか?」
「花粉が飛ぶ時期はいつなのか?」
を、キチンと調べておいた方が良いかと思います。
面倒かもしれませんが、
言葉も通じない見ず知らずの土地で苦しむ事より、
ちゃんと対策をして、楽しい旅行にした方が良いですからね♪