高齢者の交通事故の原因は身体や脳の衰え!高齢者の身体や脳に起こる事とは?

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高齢者による重大事故が毎日のようにニュースを賑わせています。

高齢者の事故は、若い世代の事故によくあるスピードの出し過ぎや交通ルールの無視など、意識的に無茶をする無謀運転とは違い、

高齢者自身が交通ルールを守り安全運転を心掛けていても、自分自身でも予測できないような、操作のミスや確認のミスで起こす事故がほとんどです。

では、なぜ高齢者は操作ミスや確認ミスを起こすのでしょうか?

それは、人間が生物として歳を重ねるごとに身体や脳が衰えていく事に原因があります。

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高齢者の交通事故の原因は、身体や脳が衰えるから?

人は誰でも高齢になると、目や耳、骨や筋肉、脳や神経、内蔵の機能などが衰えます。

身体や脳が衰える事で、素早い動きや正確な動きが出来なくなったり、周りの変化に気付きにくくなったり、集中力や判断力などが落ちる事に繋がってしまいます。

では、具体的に身体や脳にどんな事が起こるのでしょうか?

高齢者になると身体や脳に起こる事とは?

目が衰える

高齢になると、視力を調整する機能が衰えて、焦点を合わせにくくなり、遠くも近くも見えにくくなる上に、遠近感も分かりにくくなります。

また、光の変化に対する瞳孔の反応が遅くなる事で、明るい場所から急に暗くなったり、暗い場所から急に明るくなると見えにくくなります。

さらに、色がわかりにくくなったり、距離感がつかみにくくなります。

耳が衰える

高齢になると、聴覚が衰えるため、小さな音が聞こえにくくなったり、高い音が聞こえにくくなります。

また、騒音がある場所では、人の声や警告音などの機械音を聞き分けにくくなります。

脳の機能が衰える

高齢になると、脳の中で情報を伝達する化学物質やそれを受け取る受容体が減る事で、

脳の中で処理できる情報量が少なくなったり、情報を処理するスピードが遅くなります。

また、集中力が続かなくなったり(持続性注意力)、あちこちに目を配らせて注意する(転動性注意力)事が弱くなってしまいます。

神経が衰える

高齢になると末梢神経も衰えてくるので、

手足にかかる圧力を感じたり(圧覚)、目で見なくても身体の一部がどこにあるのかを感じたり(関節位置覚)するような感覚を感じにくくなります。

筋力が衰える

高齢になると内蔵の機能が落ちて筋肉を作るのに必要な栄養を吸収出来なくなったり、

成長ホルモン(テストステロン)の分泌が減る事で、筋肉の量が減っていきます。

筋肉の量と筋力は比例しますので、筋肉の量が減れば必然的に筋力が落ちる事になります。

更に、筋肉を速く動かすための筋肉繊維(速筋繊維)が減りやすくなるため素早い動きが出来にくくなります。

関節が衰える

関節同士を結合する靱帯や、筋肉と骨を結合する腱などの弾性が低下し、関節が動かしにくくなります。

さらに、骨密度が落ちる事や関節軟骨が薄くなる事で、関節に損傷を受けやすくなり、手足を動かしにくくなる原因となります。

衰えた身体や脳が運転に与える影響とは?

目の衰えが運転に与える影響

目が衰えると、遠くや近くも見えにくくなりますので、

周りの車や歩行者の動きに気付けなかったり、信号を見間違ったり、

周囲への安全確認ができにくくなってしまいます。

さらに、周りにいる車や歩行者などとの距離感がつかみにくくなる事で、

前方の車が停車した時や、歩行者が居る時にブレーキのタイミングが遅れたり、右折をする時にギリギリで発進したり、

というような危険な運転になってしまいます。

耳の衰えが運転に与える影響

音が聞こえにくくなる事で、他の車が鳴らすクラクションや車が近付いてくるエンジン音などが聞こえにくくなります。

さらに、運転者の注意を促す自動車の警告音のボリュームはあまり大きい音ではありませんので、

小さな音が聞こえにくくなっている高齢者の方には聞こえにくいのです。

また、自動車の警告音は機械音で高い音ですので、高い音が聞こえにくくなる高齢者には聞き取りにくい音です。

さらに、自動車の社内はエンジン音やロードノイズなどで、常に騒音が起きていますので、

音を聞き分けにくくなっている高齢者にとって、自動車の外の音が聞き取りにくくなってしまいます。

脳の機能の衰えが運転に与える影響

脳の中で処理できる情報量が少なくなる事で、

慣れない場所で、周囲の安全を確認にながらウインカーを出すと同時にブレーキを踏みながらハンドルを切る方向を決めるなど、

複数の操作を同時に行わなければいけない状況では、操作の間違いを起こしやすくなります。

また、脳の中で情報を処理するスピードが遅くなる事で、

脇道から車や歩行者が飛び出してきたりするような、予測していない突然の出来事があると、とっさの判断が遅れてしまったり、パニックに陥ってしまう事に繋がります。

さらに、注意力が衰えてしまうと、運転に集中できずボーッとしてしまったり、周囲の車や歩行者に注意を向けにくくなってしまいますので、

信号が変わったのを気付かなかったり、歩行者の飛び出しに気付くのが遅れたりします。

もちろん、脳の衰えが認知症になるほど悪化している場合は、上記に挙げた衰えも強くなり、

幻視や幻聴が加わる場合もありますので、運転が出来る状態ではなくなります。

神経の衰えが運転に与える影響

圧覚が衰える事で、足の裏にかかっている圧力がわかりにくくなり、

アクセルやブレーキを踏む力加減がわかりにくく、急発進や追突に繋がります。

また、関節位置覚が衰え、アクセルやブレーキを踏む足の位置がわかりにくくなる事が、アクセル・ブレーキの踏み間違いに繋がります。

筋力の衰えが運転に与える影響

筋力が弱くなる事で、ブレーキを踏む力やハンドルをきる力も弱くなってしまう事に加えて素早い動きができにくくなってしまう事で、

前方の車の急ブレーキや歩行者の飛び出しなど、とっさの場合のブレーキ操作やハンドル操作が間に合わない事に繋がります。

関節の衰えが運転に与える影響

肩・腕・手首の関節が固くなっていたり、痛みなどがあって動かしにくくなってしまうと、ハンドル操作のミスに繋がります。

また、股関節・膝・足首などの関節が固かったり痛みなどがあって動かしにくくなっていると、

アクセルやブレーキへの細かい操作が難しくなりますし、アクセルとブレーキの踏み間違いにも繋がります。

このように、高齢者の身体や脳の衰えが運転に与える影響は意外に大きく、
高齢者の交通事故のほとんどは、これらが深く関係しています。

実際に私が関わった高齢者の事故

私が今まで関わってきた高齢者の方々で、実際に事故を起こされた方も何人かいらっしゃいます。

その中で、身体や脳の衰えが原因となった代表的な2例の事故を紹介したいと思います。

84歳男性の事故

この方は、運転歴60年以上で若い頃は定年までバスの運転手をされていた方でした。

この方は自動車で温泉に行くのが趣味で、長年バスの運転手をされていた事で運転にはかなり自信を持っていらっしゃいました。

ただ、ご高齢になり足腰が弱り、ご近所に歩いて行くのも苦労されていた状況でしたので、息子さんに「運転をしないように」ときつく注意をされていたそうです。

しかし、厳しい息子さんの目を盗んで温泉に出かけていらっしゃいましたが、ある日追突事故を起こされました。

信号で止まった前の車に追突して、胸を強く打つケガをされましたが、命に別条は無く60日ほどの入院となりました。

事故の原因として、ご本人は「ブレーキを踏んだが止まれなかった」と主張されていましたが、

警察の現場検証と相手や目撃者の証言として、前の車は普通に信号で止まったにも関わらず、ノーブレーキで追突したとの事で、結局はブレーキとアクセルの踏み間違いが原因でした。

退院後、息子さんの勧めで免許を返納する事になり、マイカーも処分されてしまいました。

76歳女性の事故

この方は、軽い認知症の兆候があると病院で診断され、主治医から運転を禁じられていた方でしたが、

一人暮らしであるために自分で買い物に行かなければならず、都会から離れた郊外で歩いて行ける距離にはスーパーも無く、仕方なくマイカーを運転していた方でした。

ある日、買い物へ行く途中で歩行者に接触する事故を起こされました。

事故の状況としては、歩行者が信号の無い横断歩道を渡っているにも関わらず、停車せずに接触したとの事でした。

ご本人は「歩行者に気付かなかった」と証言されていたようでしたが、

被害者である歩行者の主張では、横断歩道を渡り始めた時には、自動車とまだかなり距離があったらしく、日中で見通しも良く、道路の中央に近い場所で衝突している事から、

「通常の精神状態では無かったのでは?」という事で検証が進められたようでした。

接触された被害者の方は軽いケガで済んだようでしたが、病院で認知症の兆候が診断され、主治医からも運転を禁止されていた状況から、

脳の機能の低下によって注意力が散漫になっていて、歩行者を認識できていなかったという結論となり、裁判になるほど大きな騒ぎになりました。

これらの事例はいずれも死亡事故のような大きな事故ではありませんでしたが、明らかに身体や脳の衰えが引き起こした事故です。

この他にも高齢者の運転で、自宅の塀に接触したり側溝に脱輪したりするような軽い事故は結構な頻度で見聞きします。

まとめ

今回は、高齢者は身体や脳のいろいろな機能が衰えていき、それが交通事故の原因になる事をお話しました。

もちろん身体や脳の衰えにも個人差があり、全ての高齢者の方々の運転が危ないわけではありませんが、

人間も生物である以上、年齢を重ねれば身体や脳の衰えから逃れる事はできませんので、

若い頃とは違う身体と脳になっている事を自覚する事は大事な事です。

実際に私が関わってきた高齢者で事故を起こした方々は、必ずと言っていいほど運転に自信を持っていらっしゃり、

「何十年も運転してきたのに事故を起こすわけがない」
「安全運転をしているから事故なんか起こさない」

と、おっしゃられていた方ばかりです。

もちろん、買い物に行くにも自動車が必要な環境にいらっしゃったり、

公共交通機関の少ない環境だったりする高齢者の方々にとって自動車の運転は死活問題ですから、

全ての高齢者の方々に免許の返納を薦めるつもりはありません。

高齢者ドライバーの事故を防ぐには、国・自治体の対策や自動車メーカーの努力やご家族など周囲の協力も重要ですが、

高齢者ご自身が、身体や脳の衰えを自覚する事が大事だと思っています。

高齢者の方がまだ運転しても大丈夫かどうか?

各都道府県公安委員会や各都道府県公安委員会から業務委託されている、指定自動車教習所等で高齢者講習及び認知機能検査を受けることができますので、

ご家族やお知り合いに高齢者ドライバーがいらっしゃる方は、ぜひ高齢者講習を受ける事を薦めて差し上げて下さい。

一般社団法人 全日本指定自動車教習所協会連合会 高齢運転者支援サイト

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