ご家族が介護を必要とする状態になって、
様々な事情で、自宅で介護しなければいけない状況になった時、
「本当に自宅で介護が出来るんだろうか?」
と、誰もが悩まれます。
自宅での介護の問題点とは?
どうすれば自宅で介護が出来るのでしょうか?
目次
必ず悩む自宅での介護
ご家族が病気やケガで入院し、退院したら介護が必要となる状態になっても、
「施設には入れたくない…」
「本人が施設に行くのを嫌がっている…」
「施設に入れるまでの期間が長すぎる…」
「家族の事情で施設には入れられない…」
などの事情で、
自宅で介護しなければいけない状況しかない時、
「自宅で介護が出来るんだろうか…」
と、皆さん必ず悩まれます。
私の経験では、いくら重い病気だろうと、
施設に入れる事が、親族全員の即決で決まったケースは、
ほとんど見た事がありません。
施設に入所させるのは難しい?
今後、さらに高まる高齢化に対して、
介護が必要になった方の受け皿として、病院や施設が不足している事を受けて、
国や行政も、在宅での介護を推奨しています。
実際に、
特別養護老人ホームに入所させたいと思っても、
「数年待ちが当たり前…」
有料老人ホームなら少し待てば入れるけど、
「料金が高い…」
という、
施設に入所するのにも、なかなか厳しい現実もあり、
施設の利用を難しくしています。
さらに、よくあるのが、
ご家族は施設に入れる気満々でも、介護を受ける側の患者さんご本人が、
「施設には入りたくない…自宅に帰りたい…」
という強い気持ちがあり、
ご家族も、ご本人の気持ちはよく分かるので
「施設に入ってくれなきゃ自分達が困る」
なんて冷たい事も言い出せず、
「どうしよう…」
と、患者さんご本人の気持ちを考えて、悩まれるケースもたくさんあります。
自宅での介護の問題点は?
そこで、選択肢として自宅での介護しかなくなるわけですが、
そこで悩まれるのが、
「自宅で介護なんかできるんだろうか?」
という事になります。
これは、もちろん介護が面倒くさいとかではなく、
「実際に介護する方も高齢で介護に耐えられない…」
「息子さんや娘さんもお仕事などの事情で介護はできない…」
「金銭面の問題で介護が難しい…」
などの理由で介護が出来ないと悩まれるケースが非常に多いです。
介護保険を使えば大丈夫?
そこで介護保険の出番です。
要介護の認定を受けられれば、
介護保険で受けられる在宅サービスは次のものがあります。
自宅で利用するサービス
- 訪問介護(ホームヘルプ)
- 訪問看護
- 夜間対応型訪問介護
- 看護小規模多機能型居宅介護(旧・複合型サービス)
- 訪問入浴介護
- 訪問リハビリテーション
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 居宅療養管理指導
自宅から通って利用するサービス
- 通所介護(デイサービス)
- 認知症対応型通所介護
- 短期入所療養介護(ショートステイ)
- 小規模多機能型居宅介護
- 地域密着型通所介護(小規模デイサービス)
- 通所リハビリテーション(デイケア)
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
生活環境を整えるためのサービス
- 福祉用具貸与
- 住宅改修
- 特定福祉用具販売
と、これだけのサービスが受けられますので、
自宅での介護のほとんどは、介護保険でカバーする事が出来ます。
では、それぞれのサービスを細かく挙げていきます。
自宅で利用するサービス
訪問介護(ホームヘルプ)
- 入浴、排せつ、食事等の介護(身体介護
- 掃除、洗濯、調理等の家事(生活援助)
- 生活等に関する相談及び助言
- その他の日常生活上の世話
訪問看護
- 病状・障害の観察と判断
- 健康管理
- 食事・清潔・排せつのケア
- 水分・栄養管理
- リハビリ
- 日常生活動作の訓練
- 医療的なケア
- 薬の飲み方と管理
- 療養生活
- 看護・介護方法に関する相談・助言
- 家族の悩みの相談
- 終末期ケア
- かかりつけの医師との連絡と調整
夜間対応型訪問介護
- 定期巡回サービス
- オペレーションセンターサービス
- 随時訪問サービス
訪問入浴介護
- 全身浴
- 部分浴
- 清拭
- 体温、血圧、脈拍等の測定
- 更衣の介護
訪問リハビリテーション
- 関節拘縮の予防
- 筋力・体力の維持
- 褥瘡の予防
- 自主トレーニングの指導
- 歩行練習
- 基本動作訓
- 日常生活動作訓練
- 家族支援
- 福祉用具・自助具の提案
- 住宅改修に関する助言
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 定期巡回サービス
- 随時対応サービス
- 随時訪問サービス
- 訪問看護サービス
居宅療養管理指導
- 介護方法等の指導・助言
- 療養上の管理、指導・助言
自宅から通って利用するサービス
通所介護(デイサービス)
- 食事、入浴、排せつの介護
- 健康管理
- 日常生活動作訓練
- レクリエーション
- その他
認知症対応型通所介護
- 食事、入浴、排せつの介護
- 生活等に関する相談・助言
- 健康管理
- 機能訓練(リハビリテーション)
- その他
短期入所療養介護(ショートステイ)
- 医師、看護職員、理学療法士等からの医療や機能訓練
小規模多機能型居宅介護
- 食事、入浴、排せつの介護
- 調理、洗濯、掃除等の家事
- 生活等に関する相談・助言
- 健康管理
- 機能訓練(リハビリテーション)
- その他
地域密着型通所介護(小規模デイサービス)
- 食事、入浴、排せつの介護
- 健康管理
- 日常生活動作訓練
- レクリエーション
- その他
通所リハビリテーション(デイケア)
- 関節拘縮の予防
- 筋力・体力の維持
- 褥瘡の予防
- 自主トレーニングの指導
- 歩行練習
- 基本動作訓練
- 日常生活動作訓練
- その他
短期入所生活介護(ショートステイ)
- 食事、入浴、排せつの介護
- 機能訓練(リハビリテーション)
- その他
生活環境を整えるためのサービス
福祉用具貸与
- 自走用標準型車いす
- 普通型電動車いす
- 介護用標準型車いす
- 車いす付属品
- 特殊寝台(電動ベッド)
- 特殊寝台付属品
- 床ずれ防止用具
- 手すり
- 歩行器
- 歩行補助つえ
- 認知症老人徘徊感知機器
- 移動用リフト
- 床走行式自動排泄処理装置
住宅改修
- 手すりの取付け
- 段差の解消
- 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床・通路面の材料の変更
- 引き戸等への扉の取替え
- 洋式便器等への便器の取替え
- その他上記の住宅改修に付帯する工事
特定福祉用具販売
- 腰掛便座
- 自動排泄処理装置の交換可能部品
- 入浴補助用具
- 入浴用いす
- 浴槽用手すり
- 浴槽内いす
- 入浴台
- 浴室内すのこ
- 浴槽内すのこ
- 入浴用介助ベルト
- 簡易浴槽
- 移動用リフトのつり具の部分
以上の介護サービスを上手く使えば、ご家族の介護負担はかなり少なくて済むようになります。
これら全ての段取りをしてくれるのが、ケアマネージャーという職種で、
介護保険の申請から全ての段取りをしてくれますので、
ケアマネージャーに希望を伝えて、ご家族の負担が最小限で済むようにサービスを組んでもらって下さい。
介護保険を使えば家族は介護はしなくていい?
これまで挙げた介護サービスを使えば介護の負担は最小限で済みますが、
ご家族が全く関わらないで済むわけではありません。
食事の介助が必要な患者さんなら、3食全部ヘルパーさんに頼むのも難しいですし、
排尿や排便も、細かく処理してあげなければいけません。
私が担当していた患者さんは、夜中に毎晩
「背中がかゆい~!!!」
と、奥さんを何度も起こし、奥さんは睡眠不足でボロボロになっていらっしゃいました。
ケアマネージャーさんも出来るだけご家族に負担がかからないようにサービスを組んでくれますが、
ヘルパーさんも出来る範囲が決まっていますので、何でもかんでもやってくれる訳ではありませんし、
ヘルパーさんが居ない間の事はご家族がやらなければいけません。
また、患者さんご本人の精神的な部分を支えるのはご家族しかできません。
私の経験上で言いますと、実は介護自体よりも精神的な部分を支える方が大変なんです。
患者さんの無理難題やワガママで、ご家族と患者さんが大ゲンカになるような場面も珍しくありません。
介護サービスを使うのにも、介護度に合わせて上限額が決まっていますので、上限額で介護サービスも制限されますし、
上限額を超えた分は、自己負担分の支払いが必要です。
ただ、自己負担分を超えた部分は、高額介護サービス費支給制度などを利用すれば
負担も抑えられますので、金銭面はある程度抑えられます。
もちろん介護サービスとは別で家政婦さんを頼む事も出来ますが、
1日1万円~2万円の実費になりますので、金銭的に余裕のある方じゃないと厳しいと思います。
細かい介護や精神的な部分の負担が、ご家族にとって、けっこう大きな負担になる事を知っておく必要があります。
自宅での介護はどこまで出来るのか 在宅介護の現場で見てきた現実とは? まとめ
1 必ず悩む自宅での介護
ご家族が病気やケガで入院し、退院したら介護が必要となる状態になっても、様々な事情で自宅で介護しなければいけない状況になると、皆さん必ず悩まれます。
2 施設に入所させるのは難しい?
施設の利用が難しかったり、患者さんご本人の気持ちを考えて悩まれるケースもたくさんあります。
3 自宅での介護の問題点は?
「実際に介護する方も高齢で介護に耐えられない…」、「息子さんや娘さんもお仕事などの事情で介護はできない…」、「金銭面の問題で介護が難しい…」などの理由で介護が出来ないと悩まれるケースが非常に多いです。
4 介護保険を使えば大丈夫?
自宅で利用するサービス・自宅から通って利用するサービス・生活環境を整えるためのサービス・自宅で利用するサービス・自宅から通って利用するサービス・生活環境を整えるためのサービスなどがあり、以上の介護サービスを上手く使えば、ご家族の介護負担はかなり少なくて済むようになります。
5 介護保険を使えば家族は介護はしなくていい?
介護サービスを使えば介護の負担は最小限で済みますが、ご家族が全く関わらないで済むわけではありません。細かい介護や精神的な部分の負担が、ご家族にとって、けっこう大きな負担になる事を知っておく必要があります。
ここまで、いろいろ語ってまいりましたが、
ご自宅での介護に関わる人間としてアドバイスしたいのは、
体にも心にも、負担になる部分はプロに任せて、ご家族は患者さんに愛情だけを注いでもらいたいという事です。
ただ、法律的な縛りもあり、ご家族の負担をゼロにできる訳ではありません。
ひとつだけ理解していただきたいのは、
患者さんはご病気で心に全く余裕を持てず、自分自身を支える事だけで精一杯で、周りの事を考える余裕なんて無いって事です。
そして、何より患者さんご自身が、誰よりも一番辛い思いをしている事だけは理解していただけたら、
介護される方の精神的負担も、家族間のトラブルも、
半分ぐらいは解決できるのではないか…と常々思っています。
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