私達も業務として、高齢者の方やご家族が通所サービスを選ばれる際には、ご相談に乗っていますが、
「デイケアとデイサービスの違いがわからない…」
「デイケアとデイサービスはどっちがいい?」
というご相談が非常に多くあります。
デイケアとデイサービスって何が違うのでしょうか?
デイケアとデイサービスのどちらを選べば良いのでしょうか?
その答えを、実際にご相談があった現場の声から解説していきます。
目次
介護保険の制度としてのデイケアとデイサービスの違いって?
デイケア(通所リハビリテーション)
デイケアは、通所リハビリテーションとして「リハビリを受けたい方が行くところ」となっており、
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリの専門家が、身体や脳の機能を回復させる訓練をして、
ご自宅での日常生活を改善するようリハビリを行うのが目的です。
デイサービスと一番大きく違うのは、デイケアは病院や老人保健施設に併設されていて、
必ず医師が常駐しなければならないと法律上で決められている事です。
デイサービス(通所介護)
デイサービスは、通所介護として「介護を受けたい方が行くところ」となっており、
障害を負われて引きこもりがちになった高齢者の社会的な交流や、ご家族の代わりに食事やお風呂などの介護をして、
ご家族の負担を減らすのが目的です。
デイサービスは、デイケアとは違って法律上で医師が常駐する義務はありませんので、
ほとんどのデイサービスには医師がいません。
デイケアとデイサービス共通のサービス
デイケアもデイサービスも送迎・食事・入浴などの一通りの介護をしてくれます。
ただし、デイケアではリハビリに送迎・食事・入浴などの介護がオプションとして付く形になり、
デイサービスでは、送迎・食事・入浴など一通りの介護にリハビリが加わるような形になるだけです。
結局、サービスの名前の通り、デイケアは通所リハビリテーションとして「通いでリハビリを受けるところ」で、
デイサービスは通所介護として「通いで介護を受けるところ」という事です。
ただ、これらはあくまでも介護保険上の制度としての教科書的な答えでしかなく、
実際に選ぶ際には、他にもいろいろと注意する必要があります。
現場の声から考えるデイケアとデイサービスを選ぶ際の注意点
実際の現場では、これらのネットなどの情報を信じて選び「こんなものなの?」と思われる利用者さんがたくさんいらっしゃいます。
実際によくあるご意見として、
・デイケアはリハビリが充実していると聞いていたが、20分ぐらいちょこちょことやってくれるだけで大した事はしてくれない。
・デイケアは医師が常駐していると聞いていたが、医者は何もしてくれない。
・デイケアにもデイサービスにも行ったが、どっちも内容は一緒だった。
という声がよく挙がります。
では、これらのご意見を解説していきます。
デイケアはリハビリが充実していると聞いていたが、20分ぐらいちょこちょことやってくれるだけで大した事はしてくれない。
制度上での
デイケアのリハビリというのは、
「デイケアに行っている間はずっとリハビリをしている」
という考え方になります。
迎えに来てもらってデイケアに着いたら、そこから全部がリハビリという考え方で、食事も入浴もレクレーションもみんなで一緒に行う体操も、全部がリハビリになっていますよ。
という事です。
デイケアに行っている時間の全てがリハビリですから、レクレーションも体操も理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのセラピストが関わっていますし、
食事では嚥下や食事動作などをセラピストが訓練してくれ、入浴や着替えなどにもセラピストが関わってくれますので、デイケアに居る時間の全てがリハビリになるという訳です。
ただし、これは制度上の話で、実際には大変な障害でもない限りはそんなに関わってくれません。
また、デイケアでは病院のように個別にリハビリをしてくれると思って選ばれる方も多いのですが、
介護保険として個別加算というものを入れていなければ個別のリハビリはしてくれません。
個別加算を入れると一人一人個別にリハビリをしてくれますが、どこのデイケアでも20分ほどしか個別でリハビリをしてくれません。
※短期集中加算が入るともっと長い時間してくれます。
それに、施設にもよりますが、レクレーションや食事・入浴などでもセラピストがアドバイスをするだけで看護師や介護職員に任せっきりのところも少なくありません。
それに、デイケアに居るセラピストの質にも差があって、知識も経験も豊富なベテランセラピストがガッツリ関わってくれるところもあれば、
セラピストの知識が少なかったり、経験が浅かったり、人手が足りなかったり、やる気がなかったりするようなところであれば十分なリハビリは期待できません。
デイケアは医者が常駐していると聞いていたが、医者は何もしてくれない。
病気に不安があるので、医師が常駐しているデイケアを選んだという方はけっこういらっしゃいます。
よくあるのが、
「どうせデイケアに行くんだから、併設の病院で薬をもらって帰ろう」
とか、
「自分で病院に来るのが大変だから、ついでに診察して欲しい」
とか、
「ちょうど足が痛かったから医者に診てもらおう」
などと考えられる方が多いのですが、
法律で、デイケアやデイサービスを利用している時間帯は病院受診が出来ないようになっていますので、普通の病気程度じゃ医師には診てもらえません。
ただし、デイケアやデイサービスの利用時間中に大ケガをしたとか意識不明になったとか緊急の場合は受診が出来ますので、
デイケアは医師が常駐しているぶん安心ではあります。
デイケアにもデイサービスにも行ったが、どっちも内容は一緒だった。
デイケアでもデイサービスでも、送迎や食事や入浴などの介護サービスは受けられますから、中身は似たようなものです。
ただ、ぶっちゃけて話しますと、デイケアはリハビリの保険報酬が高いのでセラピストを雇っていても儲けが出ますが、
デイサービスはリハビリの保険報酬が微々たるものなので、セラピストを雇っても人件費でマイナスが出ます。
ですので、デイサービスでは、人件費を考えるとあまりリハビリに力を入れたくないのが正直なところです。
しかし「リハビリをしたい!」というニーズが多いので、利用者獲得のための差別化(売り)として、
リハビリを前面に打ち出しているデイサービスがかなり増えてきました。
元々、リハビリがメインだとされているデイケアですが、
施設の方針やセラピストの質の違いで、リハビリをメインにしているデイサービスに負けているところも少なくありません。
セラピストの頭数だけ揃えた下手なデイケアより、ベテランのセラピストが経営しているデイサービスの方がしっかりしたリハビリをしてくれます。
まとめ
通所サービスを選ぶ時には、まずは情報収集としてネットで検索されると思います。
「デイケアとデイサービスの違い」をグーグルなどで検索すると、たくさんのサイトで答えが出てきますが、
どれも介護保険上の制度としての教科書的な答えしかありません。
今回、お話しさせていただいたように、現状では通所サービスも多様化してきており、介護保険上の制度としてだけでは判断できなくなってきています。
デイケア = 通所リハビリテーション
デイサービス = 通所介護
という制度上の言葉で選ぶのではなく、視点を広く持ってデイケアだろうがデイサービスだろうが実際に提供されているサービス内容と質をしっかり見極めて、利用される方に合ったところを選ぶ事がベストな選択です。