この寒い時期になると、感染性胃腸炎の患者さんが増えます。
私の担当している高齢者でも、ノロウイルスが原因の感染性胃腸炎の患者さんが出ました。
ノロウイルスによる感染性胃腸炎とは、いったいどんなものでしょうか?
現場で指導している予防策も併せてご説明します!
目次
感染性胃腸炎って何?
感染性胃腸炎とは、ウィルス・細菌・寄生虫による胃腸炎の事で、
特に感染性のあるものが感染性胃腸炎と呼ばれています。
感染する原因は、感染した人からの嘔吐物や便からの感染や
ウイルスや細菌に汚染された水や食品からの感染があります。
感染性胃腸炎は、免疫力が落ちる病気を抱えた患者さんや高齢者がかかりやすいのですが、
我々が関わっている患者さんや高齢者の方々でも、
感染性胃腸炎にかかる方が毎年いらっしゃいます。
ウイルスや細菌の種類はどのぐらいある?
感染性胃腸炎は、
たくさんの種類のウイルス・細菌・寄生虫が胃腸炎を引き起こします。
種類としては、
細菌性のもの
・腸炎ビブリオ
・病原性大腸菌
・サルモネラ
・カンピロバクタ
など
ウイルス性のもの
・ノロウイルス
・SRSV
・ロタウイルス
・腸管アデノウイルス
など
寄生虫
・クリプトスポリジウム
・アメーバ
・ランブル鞭毛虫
などがあげられますが、
何と言っても、この中で有名なのは、ノロウイルスです。
この時期は、どこの病院・施設に行っても
ノロウイルスに敏感になっていて、
面会のご家族などに嘔吐や下痢の症状が無いか?
チェックが厳しくなりますね。
ノロウイルスとは?
ノロウイルスは、人の小腸粘膜で増殖するウイルスで、
非常に感染力が強く、少ないウイルスでも感染します。
11月~3月の寒い間にかけて感染者が増加しますが、
小学校や施設で集団感染して大騒ぎになるのは
だいたいノロウイルスです。
この時期、病院でも高齢者施設でも障害者の子供達が通う学校でも、
感染予防に二酸化塩素(塩素系漂白剤)であちこち消毒するので、
どこに行っても塩素の臭いが充満していますね。
ノロウイルスはどうやって感染する?
主に、
・ノロウイルス感染者の嘔吐物・便の中に含まれているノロウイルスから感染する。・ノロウイルス感染者が触った食品にノロウイルスが食品につき、それを食べて感染する。
・生や加熱が不十分なカキなどの貝類を食べることによって感染する。
といった感染経路があります。
高齢者や子供達が感染するので多いのは
やはり、感染者の嘔吐物や便から感染するパターンが多いです。
我々が出入りしている高齢者・障害者などの施設でノロウイルスの感染者が出た場合は、
感染者の嘔吐物や便に接触しないよう、部屋を立ち入り禁止にして、
徹底的に消毒しますね。
ノロウイルスに感染した時の症状は?
感染してから、潜伏期が1日から3日ほどあります。
潜伏期間の間に、体の中で増殖して、ある程度の数になると症状が出ます。
症状としては、吐気・嘔吐・下痢・腹痛などで、
熱は軽くて済みますが、個人差もあります。
症状は、1日から2日で改善する事が多いですが、
乳児・高齢者・免疫の落ちている病気がある方は
重症化して、命に関わる場合もありますので注意が必要です。
我々が関わっている患者さんや高齢者が、下痢や嘔吐が続いている場合は、
脱水症状を起こす場合があるので、水分補給をしっかりしてもらって、
すぐに病院を受診してもらいます。
テレビで、ノロウイルスに感染して
亡くなったというニュースが流れる事がありますが、
必ずといっていいほど、亡くなるのは高齢者です。
ノロウイルスは感染力は非常に強いですが、
健康な人の命に関わるほどの力はありませんので、
健康な方々が感染した場合は、
高齢者や体の弱っている人にうつさないように
気を付ける事が大事です。
ノロウイルスに感染しないための予防策
ノロウイルスには特効薬はありませんので、
治療は腹痛や嘔吐・下痢など、
それぞれの症状に対する対症療法しかありません。
また、ワクチンもありませんので、
自分で注意して予防するしかありません。
我々が関わっている患者さんや高齢者には、
予防策として、以下の3つを徹底してもらっています。
①「手洗い」はしっかりと!頻繁に!
ノロウイルスは、石鹸やアルコールなどの消毒液では死にません。
市販のものとしては、ノロウイルスに効くのは
二酸化塩素しかありませんのが、
塩素系で手洗いなどしたら刺激が強すぎて大変な事になります。
手洗いは、ウイルスを消毒するという意味ではなく、
手に付いたウイルスを洗い流すという意味で、
石けんでよく洗い、流水で十分に流す事を徹底してもらっています。
②感染者が居たら近寄らない!触らない!
ノロウイルスに感染した人の便や嘔吐物には
たくさんのウイルスが含まれています。
これを素手で触れば、感染力が強く確実に感染します。
ノロウイルスに感染した人の便や嘔吐物に触らないのはもちろんですが、
ノロウイルスが流行する寒い時期に下痢や嘔吐の症状がある人が居たら、
念のため疑ってかかり、なるべく近寄らないようにしてもらっています。
我々が関わっている施設や学校で、感染者が出た場合は、
部外者の出入りを制限して感染の拡大を防いでいます。
施設で、ノロウイルスに感染した患者さんが自室で嘔吐した吐しゃ物が乾燥して、
ウイルスが空気中に拡散し、
空調を通して他の部屋の患者さんに感染したという事例もありましたので、
感染者に直接接触しなくても、感染者が建物内でも安心はできません。
もし、患者さんや高齢者に下痢や嘔吐の症状がある時は、
念のために必ず手袋やマスクをして対応し、
処理が終わったら、手洗い・うがい(鼻うがい)を徹底して、
使った道具は二酸化塩素(塩素系漂白剤)や煮沸で消毒しています。
③二枚貝はよく火を通す!生では食べない!
この時期、カキ鍋など貝が美味しい時期ですが、
二枚貝等はノロウイルスで汚染されている恐れがあります。
二枚貝などの食材を食べる時は、ノロウイルスを死滅させるため、
中心部が85℃~90℃で90秒間以上の加熱が必要ですので、
よく火を通して食べるようお願いしています。
ちなみに、カキなど二枚貝がノロウイルスを持っているのは、
元々、ウイルスを持っているのではなく、
二枚貝は吸い込んだ水の汚れを体内に取り込んで
きれいになった水を吐き出すため
ノロウイルスが体内に溜まってしまうからです。
そのノロウイルスの出所は、
だいたい人間が出す下水だそうです。
二枚貝が可哀そうなので、余談でした(笑)
④まな板や調理器具は必ず消毒!清潔に!
まな板・包丁・食器・ふきんなどは使用後、
二酸化塩素(塩素系漂白剤)などに浸けて消毒するか、
熱湯(85℃以上)で90秒以上の加熱して消毒してもらっています。
消毒は、調理器具の材質によって分けた方が良いです。
私はプラスチックのまな板を煮沸消毒するつもりで
鍋で煮込んだら
グニャグニャに曲がってしまった事があります(笑)
感染性胃腸炎ってノロウイルスが原因 4つの予防策とは? まとめ
1 感染性胃腸炎って何?
ウィルス・細菌・寄生虫による胃腸炎の事で特に感染性のあるものが感染性胃腸炎と呼ばれている。
2 ウイルスや細菌の種類はどのぐらいある?
細菌性のもの、ウイルス性のもの、寄生虫によるものがある。
3 ノロウイルスとは?
人の小腸粘膜で増殖するウイルスで、非常に感染力が強く、ウイルスが少ない数で感染する。
4 ノロウイルスはどうやって感染する?
ノロウイルス感染者が、排出した嘔吐物・便の中、触った食品、生のカキなどの貝類を食べる事で感染する。
5 ノロウイルスに感染した時の症状は?
症状としては、吐気・嘔吐・下痢・腹痛などで、熱は軽くて済むが、個人差もある。
6 ノロウイルスに感染しないための注意点
ノロウイルスには特効薬もワクチンもありません。
予防策としては、
①「手洗い」はしっかりと!頻繁に!
②感染者が居たら近寄らない!触らない!
③二枚貝はよく火を通す!生では食べない!
④まな板や調理器具は必ず消毒!清潔に!
上記にも書きましたが、健康な人なら
ノロウイルスに感染しても、2日ほどで治ります。
ただ、高齢者や免疫力の落ちる病気を持っている方にとっては、
命を奪うかもしれないほど大変な事になる可能性が高いです。
高齢者や免疫力の落ちる病気を持っている方のご家庭では、敏感すぎるほどに気を付けるよう
訪問するたび声をかけています。