高齢者の気分の落ち込み・・・それは老年期うつ病かもしれません!実体験をもとに解説します。

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身体や心、生活などの問題を抱えている高齢者の方々は、悩みで落ち込む事も多いです。

落ち込むだけならまだしも、

周りの方々が対応を間違うと、老年期うつ病になってしまうかもしれません。

高齢者が落ち込む原因には、どんな事があるのでしょう?

一般的なうつ病と、老年期うつ病はどう違うのでしょう?

老年期うつ病に陥るきっかけや前兆はあるのでしょうか?

予防するには、どう対応してあげれば良いのでしょうか?

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高齢者が落ち込む原因は?

今まで、延べ数千人の高齢者の方々とお付き合いしています。

その中で、何らかの問題を抱えている高齢者の方に、「辛くないですか?」と質問すると、

「大丈夫ですよ」とか「何も問題は無い」と、おっしゃる方が多いのですが、

・家族や周りの人達に気を使っている。

・自分が「元気」だと見せたい虚栄心。

・落ち込まないようにするための自分への戒め。

・意図的なポジティブシンキング。

として、無理して答えていらっしゃる方が大部分です。

認知症の方は別にして、心から「何にも悩みが無い」という方は、いままで数人程度しか記憶にありません。

そもそも高齢になると、

・だんだん衰えていく身体と頭

・あちこち悪くなっていく身体

・治らない病気やケガ

・配偶者や友人との死別による孤独

・子供と疎遠になる

・子供との力関係が変わる

・社会的な役割がなくなる

・自分が家族の負担になっていると感じる

・趣味や嗜好品に興味がなくなる

・他者との交流が少なくなる

・心を打ち明けられる相手が居なくなる

など、たくさん落ち込む原因が出てきます。

これらの落ち込みが深刻になってくると、うつ病に移行していき、

高齢者に特有の特徴が現れる「老年期うつ病」という病気になってしまいます。

実際に、私が関わってきた高齢者の方でも、精神疾患を扱う心療内科やメンタルクリニックへ受診された方は珍しくありません。

一般的なうつ病と老年期うつ病は違う?

一般的な、うつ病の症状としては、

・喪失感
・意欲の低下
・思考力の低下

・認知力の低下

などがみられますが、

これらに加えて、老年期うつ病では、

原因不明の身体的な不調を強調して訴えるケースが多いという特徴があります。

この身体的な不調の訴えは、様々なケースがありますが、

私が関わった中で、身体的な不調を訴えられたケースの具体例を挙げますと、

・もう治っているはずのケガの痛みを強く訴える。

・会うたびに身体の違う部位の不調を訴える。

・症状は軽くなっているはずなのに、どんどん悪化していると訴える。

・身体的には歩けるはずなのに、立つ事すらできない。

・誰かが居る時は「動けない」と訴え寝たきりだが、誰も居ない時は動いている形跡がある。

などが多い事例です。

これらの老年期うつ病の症状が出る前には、必ず何らかのきっかけがあります。

老年期うつ病に陥るきっかけは?

高齢者がうつ病に陥る時のきっかけで多いのは、

・大きな病気にかかる。

・大きな病気の手術後。

・元々ある病気が悪化する。

・配偶者が亡くなる。

・友人が亡くなる。

・配偶者が亡くなる事で独居になる。

・友人が亡くなる事で話し相手が居なくなる。

・子供が引っ越して会えなくなる。

・子供とケンカして疎遠になる。

・退職など仕事を失う。

・家族の介護が必要になる。

・住み寝れない土地へ引っ越さなければならなくなる。

などが挙げられますが、

もっと細かいきっかけで、うつ病に繋がった方もいらっしゃいました。

老年期うつ病の前兆は?

高齢者がうつ病になってしまう時の前兆として、

・明らかに元気が無いのに「大丈夫!」と強がる。

・ボーッとしている時間が長くなる。

・話に集中できない。

・テレビを見なくなる。

・日中でも暗い部屋に電灯も点けずに居る。

・家に閉じこもりがちになる。

・笑顔が少なくなる(愛想笑いは多くなる)。

・「全く眠れていない」と訴える。(日中にはウトウトしている)

・不安な気持ちを他人に訴えはじめる。

・怒りっぽくなる。

・ウソが多くなる。

などがみられます。

これらの前兆が出始めてからの対応が重要になりますが、

対応するには、高齢者特有の特徴を理解しておく必要があります。

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高齢者の特徴を理解しないと、対応を間違える?

高齢者には、思考や行動に高齢者特有の特徴があり、

この特徴を理解していないと、うつ病の前兆に気付いたとしても間違った対応をしてしまう恐れがあります。

高齢者の思考や行動の特徴としては、

・環境の変化に対応しにくくなる

・新しい事を身に付けるのが難しくなる

・自分と他者の意見を上手く協調できなくなる

・考え方が、理論より感覚的・直観的になる

・感情のコントロールが難しくなる

などの特徴がみられるようになります。

環境の変化に対応しにくくなる

高齢になると、感情や思考が環境の変化に付いていけず、新しい環境に適応しにくくなります。

例えば、

・奥様を亡くされた男性が、家事などの身の回りの事を自分でやらなければならなくなっても、上手くできず食事も摂れない状態になったり、話し相手も新たに作れない。

・家族の都合で、慣れない土地に引っ越した時、言葉や地理に馴染めない。

などがあります。

新しい事を身に付けるのが難しくなる

高齢になると、記銘力(記憶する能力)と想起力(思い出す能力)がどちらも落ちるので、新しい事を身に付けにくくなります。

例えば、

・家族が準備してくれた物や環境に合わせられない。

・気晴らしに新しい趣味を始めようとしても挫折してしまう。

などがあります。

自分と他者の意見を上手く協調できなくなる

自分の価値観に固執して誰の意見も聞かないか、逆に自分の意見は出さずに家族や周囲の人間の言いなりになるなど、

自分と他者の意見の妥協点を調整できなくなります。

例えば、

・家族間で問題が起こった時に、家族の都合は考えず、自分のやり方に固執してしまう。

・近所や地域で、意見の相違があった時に受け入れきれずトラブルになる。

・自分では考えず、子供の言いなりになり、「子供が言ったから」と、他の誰の言う事も聞き入れない。

・子供の言いなりにはなるが、納得はしていないので他人に愚痴る。

などの問題が起こります。

考え方が、理論より感覚的・直観的になる

考え方が理論より感覚的・直観的になり、理論的に説明されても納得できにくくなります。

例えば、

・家族と意見の相違があった時に、「○○だから○○でしょ?」と理論的に説明されても納得できない。

・理論的に計画を立てられず、とりあえず直観でやってみるが、失敗してしまう。

などがあります。

感情のコントロールが難しくなる

感情のコントロールが難しくなり、つい感情的になったり感情を表現できなくなります。

例えば、

・ちょっとした事で感情的になり、家族とついついケンカになってしまう。

・困った事が起こっても、「仕方ない」とすぐ諦めてしまい、問題が解決できない。

などがあります。

これらの高齢者の特徴を理解した上で、予防できるよう対応して下さい。

老年期うつ病を予防するには?

老年期うつ病の予防するには、前述のきっかけになる出来事があった後に、前兆が出てこないかを見逃さない事です。

さらに、若い世代の感覚で考えず、高齢者特有の思考や行動を理解した上で対応する事です。

そして、一番大事なのは、ご本人の怒りを「我がまま」と考えず、依存心を「甘え」とは取らず、

SOSとして、心の「悲鳴」である事を理解する事です。

最後に、実際にあったケースをご紹介しますので、参考にしていただければと思います。

ある80代の男性の方が奥様を亡くされ、寂しさで落ち込んでいましたが、家族に心配をかけまいと、無理に明るく振舞っていらっしゃいました。

独りになった新たな生活環境にも上手く対応できず、家事など生活の中で困る事もたくさん出てきました。

さらに、他者との協調が苦手で、老人会など地域の集会にも参加されず、デイサービスなどの介護サービスも嫌がられ、新たな話し相手もできませんでした。

話し相手が居ない事で、奥様を亡くされた悲しみや、新しい環境での苦しみを、誰にも吐き出せませんでした。

この苦しみが活力を奪い、家に閉じこもりがちになり、テレビも見ず、ボーッとして過ごす事が多くなりましたが、

たった一人のご家族である娘さんは仕事が忙しく、なかなか会いに来られない日々が続き、異変に気付いてあげる事ができませんでした。

そのうち、体調不良を訴えられるようになり、娘さんは仕事を休んで、あちこちの病院に連れていかれましたが、大きな病気は発見できず、

「病気は無いのだから大丈夫なはずだ」と論理的にご本人を説得されましたが、

ご本人は「病気があろうが無かろうが、体調が悪いのだから仕方ない!」と聞き入れず、

娘さんとケンカが続くようになり、娘さんの足が遠くようになりました。

そうしているうちに、さらに体調不良が悪化して、とうとう動けなくなってしまいました。

ここで、我々に依頼が来て介入させていただきました。

我々が介入した時には、ほぼ寝たきりになっておられ、食事も介助が必要な状態でしたが、

内科の主治医は「寝たきりになるような病気は無い」と判断されていましたので、

主治医と娘さんに相談して、精神科を受診していただきました。

精神科では、「老年期うつ病」の診断がつき、服薬治療が始まりました。


最初は、我々が訪問看護として医学的な処置をしようとしても、

何を言っても聞き入れてもらえず、怒りをあらわにして「うるさい!帰れ!」と怒鳴られる事もありましたが、

ご本人とのコミュニケーションに力を入れ、とにかくご本人の訴えを受け入れる事に徹しました。

 

娘さんにも、老年期うつ病や高齢者の特徴を説明して、

ご本人の話を聞く機会を多くして、ご本人がどんなに我がままを言われても感情的にならず、とにかくご本人の苦しみを受け入れてあげて欲しいという事を伝えました。

娘さんも納得し努力して下さり、コミュニケーションを続けるうちに、奥様を亡くされてからの寂しさや苦しみを少しずつ、話して下さるようになりました。

娘さんもお父さんの寂しさや苦しみが理解でき、お父さんを労わる気持ちが出てきたと同時に、

ご本人も少しずつ活気を取り戻し、食事も出来るようになった事で体力も回復していきました。

その後、ご自宅の家事などはヘルパーを利用し、日中はデイサービスに通われながら、元気に過ごせるようになられました。

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