我々が関わっている障害者の方々や、そのご家族でも、
病気やケガで障害者になった時、普通に国民年金を受け取れる65歳を待たなくても、
年金を受け取れる事を知らない方が多いです。
中には、知らないまま10年以上も年金を受け取っていない方もいらっしゃいました。
国民年金の障害基礎年金はどんな人が受け取れるのでしょうか?
受け取るには、どうすれば良いのでしょうか?
目次
障害基礎年金を受けるための条件は?
国民年金の障害基礎年金を受け取るには、以下の条件が必要です。
障害基礎年金を受け取れる条件
・日本に住んでいる
・65歳未満で、まだ年金を受け取っていない
・国民年金に加入している
・国民年金に加入していなければいけない期間の3分の2以上保険料を納付している
・過去1年間に国民年金の納付に滞納が無い
という条件が、まず必要になります。
障害基礎年金を受けられる障害って、どんな障害?
上記の条件に当てはまる方で、
ケガや病気により障害が残った場合に障害基礎年金が受けられますが、
年金を受けられる障害には種類があります。
障害基礎年金を受けられる障害の種類
障害基礎年金を受けられる障害の種類は、
・外部障害
・精神障害
・内部障害
の3つになります。
それぞれ、
・外部障害
眼、聴覚、肢体(手足など)の障害など
・精神障害
統合失調症、うつ病、認知障害、てんかん、知的障害、発達障害など
・内部障害
呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、癌など
となります。
障害基礎年金を受けられない障害の種類
逆に、障害基礎年金を受けられない障害の種類は、
・鼻腔機能の障害
臭覚脱失
・精神の障害
人格障害、神経症
・神経系統の障害
疼痛のみ
・呼吸器疾患による障害
加療による胸郭変形
・肝疾患による障害
慢性肝疾患
・高血圧症による障害
単なる高血圧だけ
があります。
これらの障害の種類を元に、それぞれの障害の重さで等級がつきます。
等級でもらえる金額が変わる?
障害基礎年金の等級は、1級と2級があります。
障害等級表 | ||
等級 | 障害の部位 | 障害の状態 |
1級 | 眼 | ・両眼の視力の和が0.04以下 |
聴覚 | ・両耳の聴力レベルが100デシベル以上 | |
上肢 | ・両上肢の機能に著しい障害を有する ・両上肢のすべての指を欠く ・両上肢のすべての指の機能に著しい障害を有する |
|
下肢 | ・両下肢の機能に著しい障害を有する ・両下肢を足関節以上で欠く |
|
体幹・脊髄 | ・体幹の機能に座っていることができない程度、 または立ち上がることができない程度の障害を有する |
|
体幹・脊髄 肢体 神経系統 呼吸疾患 心疾患 腎疾患 肝疾患 血液・造血器疾患 代謝疾患 悪性新生物 高血圧症 その他の疾患 |
・身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が、上記の障害と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度 | |
精神 | ・精神の障害であって、上記の障害と同程度以上と認められる程度 | |
重複疾患 | ・身体の機能の障害若しくは病状、または精神の障害が重複する場合であって、 その状態が上記の障害と同程度以上と認められる程度 |
|
2級 | 眼 | ・両眼の視力の和が0.05以上0.08以下 |
聴覚 | ・両耳の聴力レベルが90デシベル以上 | |
平衡機能 | ・平衡機能に著しい障害を有する | |
そしゃく | ・そしゃくの機能を欠く | |
音声または言語障害 | ・音声または言語機能に著しい障害を有する | |
上肢 | ・両上肢のおや指およびひとさし指、または中指を欠く ・両上肢のおや指およびひとさし指、または中指の機能に著しい障害を有する ・1上肢の機能に著しい障害を有する ・1上肢のすべての指を欠く ・1上肢のすべての指の機能に著しい障害を有する |
|
下肢 | ・両下肢のすべての指を欠く ・1下肢の機能に著しい障害を有する ・1下肢を足関節以上で欠く |
|
体幹・脊髄 | ・体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有する | |
体幹・脊髄 肢体 神経系統 呼吸疾患 心疾患 腎疾患 肝疾患 血液・造血器疾患 代謝疾患 悪性新生物 高血圧症 その他の疾患 |
・上記の障害に掲げるもののほか身体の機能の障害、または長期にわたる安静を必要とする病状が上記の障害と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度 | |
精神 | ・精神の障害であって、上記の障害と同程度以上と認められる程度 | |
重複疾患 | ・身体の機能の障害若しくは病状、または精神の障害が重複する場合であって、その状態が上記の障害と同程度以上と認められる程度 |
1級と2級では受け取れる障害基礎年金の金額が変わりますが、
ここで注意していただきたいのは、
この障害等級は、各都道府県にある日本年金機構の事務センターで決まる等級ですので、
障害者手帳の等級とは違うものです。
障害基礎年金でもらえる金額は?
障害基礎年金でもらえる金額は、障害の等級で決まります。
もらえる年金額
もらえる年金額は、障害の等級で変わります。
1級:年額 974,125円
2級:年額 779,300円
となります。
月額で換算すると
1級:月額 約81,177円
2級:月額 約64,942円
となります。
更に、18歳以下のお子さんがいらっしゃる方には、お子さん1人につき加算がつきます。
2人目までの子 1人当たり:年額 224,300円
3人目以降の子 1人当たり:年額74,800円
が支給されます。
月額で換算すると
2人目までの子 1人当たり:月額 約18,692円
3人目以降の子 1人当たり:月額 約 6,233円
となります。
例えば、障害等級が1級で、18歳以下のお子さんが2人いらっしゃる方ですと
年額で、974,125円+(224,300円×2)=1,422,725円となり、
月額で、約118,560円もらえる事になります。
障害基礎年金の申請はいつから請求できる?
障害基礎年金を申請できるのは、年金を規定通り納付していれば、
原則としては、初診日から1年6ヶ月を経過した日からしか請求できませんが、
治療の効果が期待できず、症状が固定している場合は、これより前に申請できます。
症状が固定している場合
・症状が固定した日から6ヵ月経過した日(医師が診断書に「症状が固定した」と書いている)
・人工骨頭・人工関節をそう入置換する手術を受けた日
・心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)又は人工弁を装着する手術を受けた日
・新膀胱を造設する手術を受けた日
・手足を切断又は離断する手術を受けた日
・喉頭全摘出する手術を受けた日
・在宅酸素療法を開始した日
・人工透析を初めて受けた日から3ヶ月後
・人工肛門の造設、尿路変更の手術を受けた日から6ヶ月後
と、なります。
20歳より前に障害を受けた場合は、原則では20歳の誕生日の前日が認定日ですが、
上記の症状が”固定している場合”では、20歳より前に請求できます。
障害基礎年金を請求する順序
では、障害基礎年金を請求するまでの順序を説明します。
1、初診日を確認する。
障害基礎年金を請求するには、障害の原因となった病気で初めて病院で受診した日(初診日)で計算されますので、初診日を確認して下さい。
たとえ、まだ症状が軽い時に受診していても、初めて受診した日が初診日です。
同じ病院にかかっている方は、病院で聞けばわかりますが、
病院を変えていたり、どこの病院かわからない場合は領収書などで思い出すしかありません。
注意して頂きたいのは、
「初診日は、原則として初めて治療目的で医療機関を受診した日とし、健康診断を受けた日(健診日)は初診日として取り扱わないこととする。」
という規定がありますので、
健康診断などで精密検査を受けるように指示されて病気が判明したとしても、
精密検査を指示された日ではなく、
病院で精密検査を受けた日が初診日になります。
2、年金の納付を確認する。
国民年金は20歳以上で日本国民全員が加入していますが、
国民年金の納付が
・国民年金に加入していなければいけない期間の3分の2以上保険料を納付している
・過去1年間に国民年金の納付に滞納が無い
以上の状態じゃないと障害者基礎年金を請求できませんので、
お住まいの地域の年金保険事務所か市区町村役場の年金課で納付の状況を確認して下さい。
3、書類を揃える
請求に必要な書類を、お住まいの
・年金保険事務所
・年金相談センター
・市区町村役場の年金課
で次の書類をもらいます。
①障害給付裁定請求書
障害基礎年金請求用と障害基礎年金・障害厚生年金請求用との2種類がありますので、
障害基礎年金請求用をもらって下さい。
②診断書
障害の原因となっているケガや病気でかかっている病院でもらって下さい。
傷病により診断書の用紙は8種類ありますので、複数の病気がある方は、
どの病気で請求するのかドクターと相談して下さい。
③受診状況等証明書
障害の原因となっているケガや病気でかかっている病院でもらって下さい。
初診日の証明を受けるためもらいますので、複数の病院を使っている方は、
初診日の規定(上記の障害基礎年金の申請はいつから請求できる?を参照)で
条件が有利な方の病院でもらって下さい。
④病歴・就労状況等申立書
発病日から請求時点までの治療経過や日常生活の能力などを記述するためもらいます。
お住まいの年金保険事務所、年金相談センター、市区町村役場の年金課で用紙を貰えますが、
日本年金機構のページからもダウンロードできます。
日本年金機構「病歴・就労状況等申立書を提出しようとするとき」
http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todoke/shindansho/20140516.html
これは、障害基礎年金の請求をするご本人の状況説明ですので、
ご本人が書く事になります(ご本人が書けない場合は代筆でもOKです)
4、書類を提出する
書類が揃ったら、お住まいの年金保険事務所、市区町村役場の年金課に書類を提出します。
提出する先は、
自営業や無職の人や20歳以上の学生など(第1号被保険者)は、
年金保険事務所
第2号被保険者に扶養されている配偶者(第3号被保険者)は、
市区町村役場の年金課
に書類を提出して下さい。
第3号被保険者でご注意いただきたいのは、
第3号被保険者の条件として、20歳以上60歳未満という年齢制限があるので、
60歳以上や19歳以下の配偶者は第3号被保険者にはなれないという事です。
5、申請が下りるのを待つ
申請してから年金決定がおりるまで、3ヶ月程度かかります。
ただ、「診断書」等に疑問点や不備があるときは照会の文書が送られてくる場合があります。
文書が送られてきたときは、期限までに対処しないと年金決定は中断して、請求ができなくなりますので、文書が送られてきたら必ず期限内に返送してください。
6、年金の決定
年金の権利が決定されると、社会保険庁(国民年金は年金保険事務所)から
「年金証書」
「年金決定通知書」
の2つが郵送されてきます。
もし、支給されないときは不支給決定通知書が送付されます。
年金証書と年金決定通知書が郵送されてきたら、
決定された内容(等級、受給権発生年月、年金額)をチェックして下さい。
もし、決定された内容に不服がある場合は、社会保険審査官に対し不服の申立ができます。
7、年金の振り込みを待つ
年金証書が届いてから、だいたい50日後に振込通知書(年金送金通知書)が送られてきて、
振り込み指定口座に初回の年金の振込みがされます。
その次からは偶数月に2ヶ月分ずつ振込みされます。
8、年金をもらってから
障害基礎年金をもらい始めてから、引き続き年金をうけるためには、
毎年誕生月の末日までに「現況届」を提出しなければいけません。
同時に診断書を提出する場合もありますので、かかりつけのドクターにお願いしておいた方が良いです。
障害者になったら年金が受け取れるのを知っていますか 国民年金の障害基礎年金を受け取るには? まとめ
1 障害基礎年金を受けるための条件は?
・日本に住んでいる
・65歳未満で、まだ年金を受け取っていない方
・国民年金に加入している
・国民年金に加入していなければいけない期間の3分の2以上保険料を納付している
・過去1年間に国民年金の納付に滞納が無い
という条件が、まず必要になる。
2 障害基礎年金を受けられる障害って、どんな障害?
2.1 障害基礎年金を受けられる障害の種類
・外部障害
眼、聴覚、肢体(手足など)の障害など
・精神障害
統合失調症、うつ病、認知障害、てんかん、知的障害、発達障害など
・内部障害
呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、がんなど
2.2 障害基礎年金を受けられない障害の種類
・鼻腔機能の障害
臭覚脱失
・精神の障害
人格障害、神経症
・神経系統の障害
疼痛のみ
・呼吸器疾患による障害
加療による胸郭変形
・肝疾患による障害
慢性肝疾患
・高血圧症による障害
単なる高血圧だけ
3 等級でもらえる金額が変わる?
1級と2級では受け取れる障害基礎年金の金額が変わります。それぞれの説明は本文中の表を参照。
この障害等級は、各都道府県にある日本年金機構の事務センターで審査が行われて決まる等級で、障害者手帳の等級とは違うもの。
4 障害基礎年金でもらえる金額は?
障害の等級で決まりがあります。
4.1 もらえる年金額
1級:年額 974,125円
2級:年額 779,300円
18歳以下のお子さんがいらっしゃる方には、お子さん1人につき加算がつく。
2人目までの子 1人当たり:年額 224,300円
3人目以降の子 1人当たり:年額74,800円
5 障害基礎年金の申請はいつから請求できる?
原則としては、初診日から1年6ヶ月を経過した日からしか請求できないが、治療の効果が期待できず、症状が固定している場合は、これより前に申請できる。
5.1 症状が固定している場合
・症状が固定した日から6ヵ月経過した日(医師が診断書に「症状が固定した」と書いている)
・人工骨頭・人工関節をそう入置換する手術を受けた日
・心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)又は人工弁を装着する手術を受けた日
・新膀胱を造設する手術を受けた日
・手足を切断又は離断する手術を受けた日
・喉頭全摘出する手術を受けた日
・在宅酸素療法を開始した日
・人工透析を初めて受けた日から3ヶ月後
・人工肛門の造設、尿路変更の手術を受けた日から6ヶ月後
6 障害基礎年金を請求する順序
1、初診日を確認する。
たとえ、まだ症状が軽い時に受診していても、初めて受診した日が初診日。
2、年金の納付を確認する。
年金の納付が規定外の場合は、障害基礎年金を請求できない。
3、書類を揃える
①障害給付裁定請求書
②診断書
③受診状況等証明書
④病歴・就労状況等申立書
4、書類を提出する
提出する先は、自営業や無職の人や20歳以上の学生など(第1号被保険者)は、年金保険事務所
第2号被保険者に扶養されている配偶者(第3号被保険者)は、市区町村役場の年金課
5、申請が下りるのを待つ
申請してから年金決定がおりるまで、3ヶ月程度かかる。
6、年金の決定
年金証書と年金決定通知書が郵送されてきたら、決定された内容(等級、受給権発生年月、年金額)を点検する。
7、年金の振り込みを待つ
年金証書が届いてから50日後に初回の年金の振込みがされます。
8、年金をもらってから
引き続き年金をうけるためには、毎年誕生月の末日までに「現況届」を提出しなければいけない。
※年金は個人の状況で受給内容が変わります。
ご自身で申請すると損をする場合がありますので、
お住まいの都道府県の社会保険労務士会の
社労士110番 · 総合労働相談所 · 年金相談センター
などにご相談される事をオススメ致します。
ケガや病気で障害者となってしまうと
ご本人だけではなく、ご家族や周囲の方々も
急激な生活の変化や、いろいろな手続き・届け出でパニックになります。
これを、ご本人やご家族の代わりに手続きしてくれるサービスや
総合的に細かく段取りを説明してくれるような機関があれば良いのですが、
全ての分野を総合して熟知している機関も職種もありません。
知らない者が損をする状況ですので、
あらゆる方面に、あらゆる方法で調べる事をおススメします。
私共も、少しでもそんな方々のお役に立てるよう頑張ります!