夏になると食中毒が多くなります。
在宅の患者さんに関わっている我々も、患者さんの食べ物の管理が忙しくなるシーズンです。
今回も、「食中毒」の原因から対策まで、わかりやすく解説します。
目次
食中毒とは?
食中毒とは、細菌・ウイルス・毒素・カビなどを食べ物と一緒に食べてしまう事で、いろいろな体調不良が起こる事です。
引用:厚生労働省食品安全部監視安全課
症状としては、下痢や嘔吐、吐き気、発熱などが知られていますが、食中毒の原因となるもので、症状や潜伏期間も変わります。
引用:SGS総合栄養学院
夏場に多い食中毒の原因は?
食中毒には、
・自然毒
・科学物質
・ウイルス性
の4つがありますが、この中で夏場に多いのは細菌性の食中毒です。
食中毒が多い季節
細菌は、暑くて湿気の多いところで繁殖しますので、夏場に多くなります。
引用:厚生労働省 平成28年食中毒発生状況
食中毒が発生する場所
発生場所としては、飲食店がダントツ1位で、平成27年までは不明が2位でしたが、
平成28年には家庭での食中毒が2位にランクアップしています。
引用:厚生労働省 平成28年食中毒発生状況
食中毒が起こる環境
食中毒が起こる環境として、
1位:食べ物を暑い場所にそのまま放置する
2位:手や指を清潔にしていない
3位:包丁などの調理器具をちゃんと洗っていない
という順位になっています。
引用:花王 食中毒発生状況
食中毒を起こす細菌
細菌性の食中毒には、
・細菌性毒素型
の2種類があります。
それぞれの型で原因となる細菌も違いますし、細菌もそれぞれ特徴を持っています。
この2つの型で主な細菌を、特徴や予防策まで、わかりやすく解説します。
細菌性感染型の食中毒
細菌性感染型は、細菌を食べ物と一緒に食べて、腸など身体の中で増える事でおこります。
食品に細菌が付いている時点では、まだ細菌の数が少ないので、加熱する事で食中毒を防ぐ事が出来ます。
できるだけ生ものは避け、食品を十分に加熱してから食べましょう。
代表的な細菌としては、
・腸炎ビブリオ菌
・腸管出血性大腸菌
が、あります。
サルモネラ菌
原因食品:卵・肉 など
潜伏期間:6時間~3日
症状:激しい腹痛・下痢・嘔吐・発熱
サルモネラ菌は、人間、牛・豚・ニワトリなど家畜、犬・猫・カメなどペットの腸内に生息していますので、人間の大便や家畜・ペットの糞に注意する必要があります。
また、川で取れるウナギやスッポン、ハエ・ゴキブリなどからも感染します。
予防するには!
・手や指をしっかり洗って、常に清潔にしておきましょう!
・川で取れる魚などを食べる時は十分に加熱しましょう!
・ハエやゴキブリなどが入らないところで保管しましょう!
腸炎ビブリオ菌
原因食品:海の魚介類 など
潜伏期間:8時間~1日
症状:腹痛・下痢・嘔吐・発熱
腸炎ビブリオは、海の魚や魚介類に生息しています。
この腸炎ビブリオは、塩分を好みますが真水には弱いという特徴があります。
予防するには!
・魚や魚介類を食べる時には十分に加熱しましょう!
・海産物は、真水でよく洗いましょう!
腸管出血性大腸菌
原因食品:全ての食品・井戸水 など
潜伏期間:1日~10日
症状:激しい腹痛・血便
腸管出血性大腸菌はO-157という呼び名で知られている細菌で、症状として腸で出血して血便が出る事が特徴です。
感染力が異常に強く、食中毒をおこすのに、普通の細菌では100万個ほどの細菌が必要ですが、腸管出血性大腸菌はたった100個程度で発症します。
感染力が強いので、生ものからの感染だけではなく、調理器具や同じコップを使う程度でも感染します。
予防するには!
・食品は、冷蔵庫など冷たい場所で保管しましょう!
・食品は、十分加熱してから食べましょう!
・調理器具や食器はよく洗いましょう!
・調理器具や食器も加熱して殺菌しましょう!
・生水は飲まないようにしましょう!
細菌性毒素型の食中毒
細菌性毒素型は、食べ物の中で細菌が増えて、細菌がたくさん付いている食べ物を食べる事でおこります。
細菌が増えてしまったら、加熱しても毒素は破壊できませんので、再加熱しても食中毒を起こします。
臭いや色が異常な食品や、ガスが発生して容器が膨らんでいるような食品は食べないようにしましょう。
代表的な細菌としては、
・セレウス菌
・ボツリヌス菌
などがあります。
黄色ブドウ球菌
原因食品:おにぎり・サンドイッチ など
潜伏期間:1時間~3時間
症状:腹痛・下痢・嘔吐・発熱
黄色ブドウ球菌は、健康な人間の皮膚の表面に普通にいる細菌で、特に傷や荒れがある部分に多く居ます。
このため、おにぎりやサンドイッチなど、素手で扱う食品が黄色ブドウ球菌で汚染されます。
予防するには!
・おにぎりやサンドイッチなどを触る際は、手袋をしたりラップをかけて扱いましょう!
・食品は冷蔵庫など冷たい場所で保管しましょう!
セレウス菌
原因食品:チャーハン・焼きそば など
潜伏期間:嘔吐型:30分~6時間 下痢型:8時間~16時間
症状:嘔吐型:吐き気・嘔吐 下痢型:腹痛・下痢
セレウス菌は、普通の川や土の中に居る細菌で、嘔吐型と下痢型の2つの型で食中毒を起こします。
米・小麦・豆などの穀類を原料とした食品で増殖します。
90度以上の加熱に耐え、加熱した後の30度前後の温度で最も活発になるため、チャーハンや焼きそばなど、調理した食品で食中毒を起こします。
予防するには!
・調理した食品は早めに食べましょう!
・残したものは、冷蔵庫など冷たいところで保管しましょう!
ボツリヌス菌
原因食品:缶詰・瓶詰など
潜伏期間:8時間~1日半
症状:便秘・嘔吐・筋力低下・神経症状
ボツリヌス菌は、酸素の無いとこで増えますので、缶詰・瓶詰・真空パックで発生します。
また、1歳未満の乳児にハチミツを食べさせると、乳児ボツリヌス症という食中毒を起こします。
他の細菌と違う症状として、神経を犯す毒素を作るため、筋力低下・視力低下・呼吸困難などの神経症状が出ます。
また、下痢はせず便秘になる事があります。
予防するには!
・膨らんでいる缶詰や真空パックは食べないようにしましょう!
・冷蔵庫などの冷たい場所で保管しましょう!
・常温保存かどうか?消費期限を確認しましょう!
・生後1歳未満の乳児にハチミツを食べさせないようにしましょう!
食中毒を防ぐには?
ここまで解説しましたように、夏に出る食中毒はいろいろな特徴を持っています。
予防するために以下の注意点を守りましょう!
・飲食店で食べた後は、体調に注意する!
・できるだけ生ものは避ける!
・食べ物は十分に加熱して食べる!
・臭いや色が異常な食品は食べない!
・食べ物は、暑い場所に長時間置かない!
・食品は、冷蔵庫で保管する!
・手を清潔に保つ!
・調理器具や食器も清潔に保つ!
・生ものは食べる前によく洗う!
・生水は飲まない!
・食品を扱う時は、手で直接触らない!
・調理した食品は早めに食べる!
・食品の保存方法を守る!
・消費期限を守る!
・容器が膨らんでいるものは食べない!
厚生労働省の発表では、食中毒で平成28年に14人、平成29年に3名の死者が出ています。
たかが、食中毒となめないで、しっかり予防する事をオススメします!