万引きを繰り返してしまう病気 クレプトマニアとは?

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最近、元世界的なマラソン選手が、万引きを繰り返し逮捕されるという事件が大きく報じられました。

万引きというと普通は、「欲しいものがあるけどお金が無い」という経済的な理由や、

思春期で、ゲーム感覚や悪ぶりたい気持ちで万引きをするというケースが多いと思います。

私が担当していた障害者の男の子が、

「DVDが欲しいけど、お金が無いから万引きしようかな」

なんて言った事を叱った事があります。

しかし、

「物が欲しい」とか「お金が無い」からという理由ではなく、

衝動的に万引きを繰り返してしまう

「クリプトマニア」

という、病気があるんです。

このクリプトマニアとは、どんな病気なのでしょう?

クレプトマニアとは?

クレプトマニアとは、「窃盗症」とも呼ばれ、「物を盗む」という欲求や衝動を抑えられない「衝動制御障害」という病気のひとつです。

「欲しいから盗む」のではなく、

「盗む」という行為のスリルや成功した時の達成感・満足感を得たいという欲求を満たす事や、

ストレスや不安な気持ちを解消しようと、万引きなどの窃盗を繰り返します。

ほとんどの場合、盗んだもの自体には関心はなく、

パンやアメ、安価な化粧品などを盗んで、そのまま捨てたり、使わず貯めこんでいたり、他人へあげたりします。

クレプトマニアに責任能力はある?

2016年に72歳の男性が青森市内の100円ショップで、パン2個とスプーン1本(324円相当)を盗み、逮捕されて懲役5年の実刑判決を受けた事件がありました。

その男性は、2011年にも窃盗で逮捕され、懲役4年6か月を言い渡されて、刑務所へ服役し、

刑期満了で2016年1月に出所しましたが、わずかその2か月後にこの事件を起こしました。

この男性は、これ以前にも窃盗で逮捕されており、被告人質問で、なぜ窃盗を繰り返すのかと問われたところ

「自分でもよくわからない」

と証言し、お店に入ると衝動的にものを盗んでしまうと主張しました。

実際に、逮捕の1週間前には、ちゃんとお金を持っているのにウィスキーを万引きしています。

最近では、世界的なマラソン選手が、窃盗の執行猶予中にも関わらず、万引きをして逮捕された事が各メディアで大きく報じられました。

万引きなど窃盗を繰り返す犯罪は、「常習累犯窃盗罪」という罪に問われます。

盗犯等防止法第3条

「常習として前条に掲げたる刑法各条の罪又は其の未遂罪を犯したる者にして其の行為前十年内に此等の罪又は此等の罪と他の罪との併合罪に付三回以上六月の懲役以上の刑の執行を受け又は其の執行の免除を得たるものに対し刑を科すべきときは前条の例に依る」

要するに、10年以内に窃盗罪などで懲役6か月以上を3回以上繰り返すと、

無条件で3年以上の懲役となる事が法律で定められており、

何度も窃盗を繰り返す常習累犯窃盗罪では実刑が確実となります。

クレプトマニアを理由に情状酌量で減刑された判例もありますが、減刑されるだけで、クレプトマニアを理由に無罪となった判例はまだありませんので、

精神疾患として扱われたとしても、万引きなどの窃盗を犯せば犯罪者になるというです。

クレプトマニアの原因になるものは?

クレプトマニアに関わらず、精神疾患は複雑なので、明確な原因は特定されていませんが、

クレプトマニアの原因

・うつ

・摂食障害
(過食・拒食)

・解離性障害
(自分が自分であるという感覚が失われる)

・虐待
(子供の頃から親に虐待を受けるなど)

・月経

等との関連がみられるようで、

クレプトマニアの70%以上に摂食障害がみられるという報告もあります。

ホルモンなどの生理学的な観点からだと、

クレプトマニアで、「盗む」という行為を止められないのは、βエンドルフィンによる作用が考えられます。

βエンドルフィンは、脳内麻薬とも呼ばれ、マラソンなど苦しい状況を緩和させるためのホルモンで、

・鎮痛作用
・気分の高揚
・幸福感

を与えます。

「盗む」という強い緊張感を伴う「苦しい」場面で、脳は苦しさを緩和させようとβエンドルフィンを分泌させ、

それが高揚感につながり、盗む事が快感になって、不安も抑えられストレスの解消にもなります。

また、盗みが成功した時は、ドーパミンの分泌による作用が考えられます。

ドーパミンは、脳内の神経伝達物質で、

・運動調節
・ホルモン調節
・快楽
・意欲
・学習

に関わります。

このドーパミンは、ギャンブルなど、成功した時の達成感を快楽の感情として学習し、意欲に繋げる作用がありますが、

クレプトマニアの場合は、「盗み」という強い緊張感を伴う行為が成功し、その達成感でドーパミンが分泌して、この成功を

「気持ちいい!」

と学習してしまい、ドーパミンによる快楽を得たいために盗難を繰り返します。

また、判断力を高める神経伝達物質であるノルアドレナリンの働きが不安定になる事で、窃盗が「悪い事」だという判断が鈍る事も考えられます。

クレプトマニアに陥る経過は?

衝動的に盗みを繰り返すクリプトマニアも、最初は経済的な理由や興味本位で万引きをしています。

その後、ストレスなどをきっかけにして再犯を重ね、何度かの万引きで成功し、ハマっていく例が多いようです。

慢性化する前に、捕まれば精神疾患にまで陥らなくて済んだのでしょうが、

運良く(運悪く?)捕まらなかったため、犯行を繰り返す事で自信をつけ、悪い事をしているという判断力がどんどん薄れていくわけです。

悪意が薄れているケースとして、万引きしたパンを店内で食べているところを捕まるという例もありました。

クレプトマニアの要因

クレプトマニアとして統計的に多いのは、

女性が多い

クレプトマニア患者の50%以上が女性で、有病率は男性の3倍です。
月経との関連や、スーパーで買い物をするなど万引きをしやすい環境も関連していると考えられます。

高齢者に多い

65歳以上の割合が増えており、子離れや配偶者との死別などが要因になっていると考えられます。

摂食障害と合併する事が多い

拒食症や過食症などの摂食障害と合併するケースが多く、クレプトマニアの70%以上に摂食障害がみられるという報告もあります。
過食症で、食べものが欲しくて万引きを始めたという事例もあります。

家族関係に問題を抱えている

裕福な家に育ち、良い子で生きて来たがために、親への不満が強いというケースが多いようです。

などの要因が挙げられています。

クレプトマニアの診断

クレプトマニアの診断基準として、

米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアル(DSM-Ⅳ-TR)では、

クレプトマニアの診断基準 DSM-Ⅳ-TR

・個人的に用いるためでもなく、金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。

・ 窃盗におよぶ直前に緊張の高まりがある。


・ 窃盗を犯すときの快感、満足、解放感を感じる。


・ 盗みは怒りまたは報復を表現するためではなく、妄想または幻覚に反応したものでもない。


・ 盗みは、行為障害、躁病エピソード、または反社会性人格障害ではうまく説明されない。

の5項目となります。

また、動機が物欲ではないため、盗んだものを使用せず、捨てたり、そのまま置いておいたり、人にあげたりする行動がみられます。

認知症でも万引きを繰り返す行為がありますが、

認知症での万引き

・人のものと自分のものの区別がついていない

・窃盗という犯罪である事が認知できていない

・お金を払う事を忘れている・払ったと思っている

・罪悪感が無い

などの特徴があり、クレプトマニアの症状とは根本的に違います。

クレプトマニアの治療

クレプトマニアの窃盗という症状は刑罰の対象となりますが、反省という意識ではコントロールできない病気ですので、刑罰では改善できません。

病気としての治療は、

・個別精神療法
・集団精神療法
・条件反射制御法

などのプログラムが行われます。

また服薬として

・抗うつ剤
(パキシル・ジェイゾロフト・レクサプロ・デプロメール)
・三環系抗うつ薬

などが有効だという報告があります。

以前は、精神科や心療内科でも治療が難しい側面がありましたが、

現在では、クレプトマニアの専門病院などもあり、治療も進歩しています。

万引きを繰り返してしまう病気とは? まとめ

まとめ

1 クレプトマニアとは?
「窃盗症」とも呼ばれ、「物を盗む」という欲求や衝動を抑えられない「衝動制御障害」という病気のひとつ。
「盗む」という行為のスリルや成功した時の達成感・満足感を得たいという欲求や、ストレスや不安な気持ちを解消しようと、万引きなどの窃盗を繰り返す。

2 クレプトマニアに責任能力はある?
精神疾患として扱われたとしても、万引きなどの窃盗を犯せば犯罪者になるという事。

3 クレプトマニアの原因になるものは?
精神疾患は複雑なので、明確な原因は特定されていないが、・うつ・摂食障害(過食・拒食)・解離性障害(自分が自分であるという感覚が失われる)・虐待(子供の頃から親に虐待を受けるなど)・月経等との関連がみられる。

4 クレプトマニアに陥る経過は?
衝動的に盗みを繰り返すクリプトマニアも、最初は経済的な理由や興味本位で万引きをしている。
その後、ストレスなどをきっかけにして再犯を重ね、何度かの万引きで成功し、ハマっていく例が多い。

5 クレプトマニアの要因
クレプトマニアとして統計的に多いのは、・女性が多い・高齢者に多い・摂食障害と合併する事が多い・家族関係に問題を抱えているなどの要因が挙げられている。

6 クレプトマニアの診断
DSM-Ⅳ-TRでは、
・個人的に用いるためでもなく、金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。
・ 窃盗におよぶ直前に緊張の高まりがある。
・ 窃盗を犯すときの快感、満足、解放感を感じる。
・ 盗みは怒りまたは報復を表現するためではなく、妄想または幻覚に反応したものでもない。
・ 盗みは、行為障害、躁病エピソード、または反社会性人格障害ではうまく説明されない。
の5項目となる。

7 クレプトマニアの治療
病気としての治療は、・個別精神療法・集団精神療法・条件反射制御法のようなプログラムが行われる。
服薬として、・抗うつ剤(SSRI :パキシル・ジェイゾロフト・レクサプロ・デプロメール)・三環系抗うつ薬などが有効だという報告がある。

有名人の事件でメディアが報じ、一般的になったクレプトマニアですが、

窃盗罪で、このクリプトマニアを装うケースも増えてきているようです。

元々、精神疾患だからといって、無罪になったり罪が軽くなる事に議論がありますが、

被害者にとっての被害は、精神疾患の有無は関係ありませんし、

失ったものや人は戻ってきません。

ただ、ウソをついて罪を免れるような不平等な事が起きないよう、精神科医のドクターの精査に期待したところですし、

こんな病気にならないような社会にできるような努力も必要なのではないかと思います。

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