福島・茨城・埼玉・東京の4都県の高齢者施設で計27人が、
腸管出血性大腸菌O157に感染し、食中毒が発生したと今月15日厚生労働省が発表しました。
原因は、千葉県の生産業者が出荷したサンチュが原因だと言われています。
O157とは、どんなものなのでしょうか?
O157の食中毒を防ぐには、どうすれば良いのでしょうか?
もしO157が発生したら、どう対応すれば良いのでしょうか?
他に高齢者施設などでは、どんな事例があるのでしょうか?
目次
O157とは?
引用:twitter
O157とは、病原性大腸菌の一種で「腸管出血性大腸菌」と呼ばれるものです。
O157は家畜などの便にみられ、便に汚染された食物を介して人間の口に入り感染症を起こします。
普通の菌は100万個以上身体の中に入らないと食中毒は起こしませんが、
O157は、菌が100個ほど入れば、身体の中で爆発的に増殖して食中毒を起こすほど感染力が高いのが特徴です。
その他
- 水中で数か月生きられる
- 土中で数か月生きられる
- 胃酸の中で生きられる
- 冷蔵庫の中で生きられる
- 温かく水分があるところで増殖する
という特徴があり、
このような特徴から、夏場に発生する事が多いですが、感染力が異常に強いので冬場に食中毒を起こす事もあります。
症状としては、
- 腹痛
- 下痢
- 発熱
などですが、
この症状が出てから数日~2週間後に溶血性尿毒症症候群(HUS)として
- 顔面蒼白
- 倦怠感
- 浮腫み
- 乏尿
- 血便
- 腎不全
などを起こす事があります。
さらに、脳症を起こす事もあり、
- 頭痛
- 不穏
- 幻覚
などの症状が出て、昏睡状態になる事もあります。
感染経路としては、家畜の便を感染源としていますが、
潜伏期間が4日~8日ある事や、感染しても症状が出ない人も居て、
症状が治まっても1~2週間は腸の中に残るため、感染した本人が気付かないうちに他の人にうつしてしまう事が多々あります。
O157の食中毒を予防するには?
O157の感染を防ぐには、
- 生鮮食品は新しいうちに食べる
- 肉汁や魚の水分が他の食材にかからないようにする
- 食材はよく洗って食べる
- 75℃で1分間加熱する
- 温め直しも十分に加熱する
- 井戸水は沸騰させてから使う
- -15℃の冷凍庫で保管する
- 常温で解凍しない
- 調理後の食品は常温で長く放置しない
- 食べ残しは冷蔵庫で保存する
などが挙げられますが、
食物を洗ったり、高熱で殺菌しても、容器が汚染されていれば感染源になりますし、
調理の段階で調理する人が保菌者だった場合、食物全体がO157で汚染されます。
食品を配膳する人が保菌者でも、食物を汚染する可能性があり、
低温乾燥でO157の増殖を抑えても、食物自体を加熱して殺菌しても、
最後に、食品に触れる人が保菌していれば一気に感染します。
O157を確実に予防するためには、調理・配膳する人が
- せっけんを使って手洗いを徹底する
- アルコールなどで消毒する
- 容器や器具をしっかり洗浄・除菌する
- 体調がおかしい時は食べ物に触らない
という事が最も重要です。
実際の高齢者施設の事例でも、高齢者自身が感染源になる事は稀で、ほとんどの場合、職員や家族が感染源になっています。
もし、O157が発生したらどう対応すればいい?
前述したO157の食中毒の症状がみられた場合、次の注意点に気を付けながら対応して下さい。
O157の食中毒が疑われる場合、
- 糞便を直接触らない
- 必ず手洗い、消毒をする
- 衣類は家庭用漂白剤で殺菌する
- 風呂は清潔にする
- 病院を受診する
という点に注意して行動して下さい。
糞便を直接触らない
O157は糞便の中に多くいますので、糞便を直接触ると感染してしまいます。
糞便を処理する場合は、使い捨てのゴム手袋などをして、
処理に使った手袋やトイレットペーパー、オムツなどは、しっかり密閉できるビニール袋に入れて、漏れないようにして下さい。
必ず手洗い、消毒をする
O157は、ごく微量でも感染しますので、手袋をして糞便を処理したとしても、目に見えない微量の糞便が付着していれば十分感染します。
患者さんに直接触ったり、糞便を処理した時は、必ずせっけんで手を洗い、消毒用アルコールなどで消毒して下さい。
また、患者さんが触ったところも必ず消毒するようにして下さい。
衣類は家庭用漂白剤で殺菌する
症状が出た時に患者さんが使用していた衣類(特に下着)は、出来れば捨てて下さい。
洗濯するのであれば、家庭用漂白剤などで殺菌してから洗濯し、十分に乾かしてから使って下さい。
風呂は清潔にする
下痢などで身体が汚れた時は、お風呂で洗うと思いますが、お風呂を使った時は同じお湯やタオルを使わず、必ず交換して下さい。
お風呂の使用後は、浴槽や椅子なども殺菌して、清潔にしておいて下さい。
病院を受診する
O157の食中毒の食中毒は、元気な若者であれば自然に治っていく場合もありますが、
内臓や免疫が弱っている高齢者は重症になる危険性が非常に高いです。
下痢や血便など、O157の食中毒が疑われる場合は、なるべく早めに病院を受診して検査・治療をして下さい。
食中毒の症状が出て、O157が原因かどうかわからない場合でも、念のため病院を受診しておく事をおすすめします。
高齢者施設で実際にあったO157の事例
2017年に起きた惣菜チェーン店のポテトサラダを原因としたO157の食中毒は
多くのメディアで報道され、記憶に新しいところですが、
O157の食中毒は毎年のように発生しています。
その中でも、高齢者が被害者となるO157の食中毒は、高齢者施設で発生する事が多く、
参考として、近年に高齢者施設でO157の食中毒で死者を出した大きな事件を挙げてみます。
2011年8月 千葉県
2011年8月11日に千葉市保健所に高齢者施設の入所者4名・職員1名が下痢の症状を示し、
入所者1名からO157が検出されたとの報告がありました。
保健所が調査すると、入所者12名、職員5名からO157が検出され、職員のうち1名は給食施設の職員で、この職員が感染源と特定しました。
感染源の食品は、ローストビーフと卵サンドで、感染した職員からの二次感染の可能性が示されました。
このケースでは、入所者1名が亡くなり、大きな食中毒事故となりました。
2012年8月 北海道
2012年8月7日に札幌市内の高齢者施設で入所者7名が食中毒の症状が出ていると札幌保健所に連絡があり、
同日苫小牧市内の高齢者施設でも食中毒が発生したと苫小牧保健所に連絡が入りました。
調査の結果、同じ業者が卸していた「白菜きりづけ」からO157が検出され、
札幌市内で6施設、札幌市外で5施設において食中毒が発生している事がわかりました。
この事件では、5名の高齢者と4歳の女児1名の計6名の死者が出た大規模な食中毒事件となりました。
2013年8月 群馬県
2013年7月23日に群馬県高崎市の有料老人ホームで入所者1名から血便がみられ、
その後、計4名のO157による食中毒が発生しました。
症状が出た90歳代の女性は、この後亡くなられましたが、
高崎市保健所や施設からも原因の発表はされていません。
2016年6月 群馬県
2016年6月4日に群馬県伊勢崎市の高齢者施設に入所していた90歳代の女性が下痢や血便を呈し、
6日に入院し、7日に死亡するというO157の食中毒事件が起きました。
検査の結果、便からO157が検出されましたが、同施設の他の入所者や職員からはO157が検出されず、原因は発表されていません。
2016年8月 千葉県・東京都
2016年8月27日に東京都羽村市の有料老人ホームでO157による食中毒が発生しました。
患者数は施設職員も含めて32名にものぼり、5人の高齢者が亡くなる大惨事となりました。
夕食に出されたきゅうりのゆかり和えからO157が発見され、調理職員の中の1名からもO157が検出されたため、
この職員からの感染だと思われましたが、この職員はきゅうりのゆかり和えの調理は担当していませんでした。
東京都健康安全研究センターが調査した結果、千葉県内の同系列の施設でもきゅうりのゆかり和えでO157の食中毒を起こしている事がわかりましたが、
東京都は、監視指導と衛生講習会を実施しただけで、原因の発表はしていません。
関東地方と福島県の高齢者施設でO157が発生?!O157食中毒の予防と対応は? まとめ
1 O157とは?
病原性大腸菌の一種で「腸管出血性大腸菌」と呼ばれるもので。菌が100個ほど入れば、身体の中で爆発的に増殖して食中毒を起こすほど感染力が高いのが特徴です。
2 O157の食中毒を予防するには?
O157の感染を防ぐには、
- 生鮮食品は新しいうちに食べる
- 肉汁や魚の水分が他の食材にかからないようにする
- 食材はよく洗って食べる・75℃で1分間加熱する
- 温め直しも十分に加熱する
- 井戸水は沸騰させてから使う
- -15℃の冷凍庫で保管する
- 常温で解凍しない
- 調理後の食品は常温で長く放置しない
- 食べ残しは冷蔵庫で保存する
などが挙げられますが、確実に防ぐには調理・配膳する人が
- せっけんを使って手洗いを徹底する
- アルコールなどで消毒する
- 容器や器具をしっかり洗浄・除菌する
- 体調がおかしい時は食べ物に触らない
という事が大事です。
3 もし、O157が発生したらどう対応すればいい?
O157の食中毒が疑われる場合、
- 糞便を直接触らない
- 必ず手洗い、消毒をする
- 衣類は家庭用漂白剤で殺菌する
- 風呂は清潔にする
- 病院を受診する
という点に注意して行動して下さい。
4 高齢者施設で実際にあったO157の事例
近年に高齢者施設でO157の食中毒で死者を出した大きな事件を挙げています。
2011年8月 千葉県
2012年8月 北海道
2013年8月 群馬県
2016年6月 群馬県
2016年8月 千葉県・東京都
※詳細は本文をご参照下さい。
O157に限らず、ウイルスや細菌は目に見えないため、常日頃からの予防が大事になってきます。
ちょっとした不注意や手抜きが高齢者の命を奪ってしまうかもしれない事を考えて行動する事を、
常に頭に置いておいて下さいね♪