40代から50代の健康診断で約7割が異常値を示す血圧。
我々が関わっている患者さんも血圧が高い方は多いですね。
寒い季節の血圧の変動は大きな病気に繋がりかねません。
この血圧の異常の原因と対策について語ります。
目次
最高血圧と最低血圧とは?
血圧とは、心臓が押し出した血液が血管を通る時の圧力だというのはご存知だと思います。
血圧を測ると最高血圧と最低血圧という数値が出ますよね。これが何を表すのかと言いますと、
最高血圧とは、
心臓が血液を押し出すため縮まって、血管への圧力が最高にかかっている状態の血圧です。病院では収縮期血圧とも呼びます。
最低血圧とは、
心臓が血液を押し出さない時に緩んで、血管への圧力が最低になった状態の血圧です。拡張期血圧とも呼びます。
この血圧の基準値は、家庭と病院では違う数値となっています。
家庭で測った時の正常値は、最高血圧135mmHg未満、最低血圧85mmHg未満
病院で測った時の正常値は、最高血圧140 mmHg未満、最低血圧90 mmHg未満
とされています。
なぜ家庭で測った血圧と病院で測った血圧の正常値が違うかというと、家庭ではリラックスして測れるが、病院ではやや緊張した状態で測るので高めに出るという事です。
これが結構バカにならないんです。
私が担当していた患者さんは病院で測る血圧が、最高血圧140mmHgを超えていて、血圧を測るたびに看護師さんから
「薬を飲むほどの高血圧ではないですが、気を付けて下さいね」
と、毎回注意される方がいらっしゃいましたが、ご自宅で血圧を測ると最高血圧120mmHg前後ですごく良好でしたから、ドクターに報告書をお送りした事がありました。
このような事例が多くて、2014年に日本高血圧学会が出した「高血圧治療ガイドライン」では
「診察室血圧と家庭血圧の間に診断の差がある場合、家庭血圧による診断を優先する」
と示されました。
また、血圧の変動は、
・循環血液量(全身の血液量)
・心拍出量(心臓が血管へ押し出す血液の量)
・末梢血管抵抗(血液が流れる時の血管の抵抗)
・血液粘稠度(血液の粘り気)
で起こりますので、これらの要因(複数も)の変化で血圧が高くなったり、低くなったりします。
高血圧の原因
高血圧の原因は、
・本態性高血圧症(原因がよくわからない)
・二次性高血圧(病気など特定の原因がわかっている)
に分類されますが、原因がよくわからない本態性高血圧症の割合の方がかなり多いとされています。
確かに、病気が原因で高血圧になる方よりも、高血圧が原因で病気になる方の方が圧倒的に多いですよね。
高血圧になる病気(二次性高血圧)としては、
・腎臓の病気(腎血管性高血圧、腎実質性高血圧など)
・先天性の病気(大動脈縮窄症、Liddle症候群など)
・副腎皮質の病気(原発性アルドステロン症 、クッシング症候群など)
・膠原病(高安動脈炎など)
などが挙げられますが、これも健康診断で高血圧が見つかり、再検査と診察で見つかる事が多いですね。
健康診断でひっかかる高血圧のほとんどは「原因がよくわからない」本態性高血圧症です。
本態性高血圧症のほとんどは、
・運動不足
・塩分の過剰摂取
・喫煙
・肥満
・飲酒
・ストレス
・睡眠不足
といった生活習慣や嗜好によるものが原因です。
高血圧への対策
では、高血圧への対策はをどうするのか?と言いますと、
高血圧になる病気がわかっている方(二次性高血圧)は、
原因となっている病気を治すしかありません。
必ず病院でしっかり治療をして下さい。
問題は、生活習慣や嗜好によるものが原因の本態性高血圧症です。
生活習慣や嗜好が原因の本態性高血圧なら、生活を見直すことで改善できます。
では、ひとつずつ対策を考えていきましょう。
・運動不足
これは、運動を習慣化して頂くしかないのですが、運動を指導しようとして、よく聞くのが、
「仕事で身体を動かしてるから大丈夫」
「家事もけっこう身体使うんですよ」
という勘違いなんです(泣)
仕事や家事では高血圧を改善するほどの運動量は確保できません。
高血圧を改善するための運動の条件として、
・有酸素運動(ジョギング・ウォーキング・水泳・自転車など)
・1日30分(10分ずつ3回でも可)
これを毎日行って下さい。
ここでの注意点は、力むような運動だと血圧が急激に上昇して危ないので、筋トレのような激しい運動ではなく、軽く息が弾む程度の軽い運動を行う事です。
運動を継続するのに、一番多い問題は
「毎日は続けられない」
という事です。
私が担当する患者さんもこの問題が非常に多かったですね。
これを解消するには運動する目的を作る事です。
私が在宅のリハビリで運動を続けるための目的を提案した事例として、
・犬を飼う(毎日、散歩が必要になる)
・その日に飲むビールを毎日買いに行く(毎日、晩酌する人向け)
・タバコを1箱だけ買いに行く
・新しい靴とトレーニングウェアを購入する(買ったのに、もったいない・・・となる)
・神社に行く(神様に祈願で毎日来ますと約束する)
というのがありましたが、これらを提案した患者さんは毎日運動できました。
上記はほんの一例です。
目的となる事は個人々それぞれで違いますので、自分がやる気になる目的を見つけて下さいね。
・塩分の過剰摂取
一般の人の1日の食塩摂取の適量は、
男性8グラム未満
女性7グラム未満
とされていますが、日本高血圧学会では1日6グラム未満を推奨しています。
塩分の多い食べ物として、梅干しや味噌・醤油を使った食べ物はよく出てきますが、意外にもパン・麺類はけっこう塩分が多いようです。
もっと意外なのは、甘いチョコレートやお酢にも味の調整のため食塩がけっこう使われていることも多いみたいです。
塩味は、日本人の味覚にとってけっこう大事な味覚で、私の担当した患者さんも、他の調味料の薄味にはあまり気にされませんが、塩分を少なくすると、途端に文句を言われる事が多かったですね。
・喫煙
喫煙は、交感神経を刺激して脈拍を増やし、血管を収縮させて結果的に血圧が高くなります。
これを防ぐには禁煙しかないんですが・・・
私もタバコがやめられないクチなんで・・・偉そうな事は言えません(笑)
まずは、禁煙じゃなく減煙から始めてみましょう!(私も(笑))
・肥満
肥満の方は正常な体重の方と比べて、高血圧の方が約2~3倍多くなります。
そもそも食べ過ぎるから肥満になるわけで、食べ過ぎれば塩分も摂りすぎ血圧を高くします。
また、肥満になるとインスリンの働きで、全身の血液量が増える事や交感神経が刺激され末梢血管を収縮させる事で血圧が上昇します。
更に、脂肪細胞から分泌されるアンギオテンシノーゲンという物質が血管を収縮させ血圧を上昇させます。
これを解消するにはダイエットしかありません(泣)
頑張って痩せましょう!(私も(笑))
ダイエットしたい方は
↓
・飲酒
まず、お酒好きの方!ご安心下さい!(笑)
飲酒といっても、適量なら逆に血圧を下げると言われています。
問題なのは、過度な飲酒です。
適量のアルコール摂取は血管が拡張して血圧を下げますが、過度にアルコールを摂取すると血管が収縮して血圧を上げる作用があります。
アルコール30mlで血圧が3mmHg上がると言われています。
アルコールが30ml含まれている量はだいたい
ビールで大瓶1本
ワインでグラス2杯
日本酒で1合
だそうです。
血圧を上げない為には、量に気を付けて飲むと良いですね。
ちなみに、患者さんに制限をお願いするのに一番モメるのはお酒です。(笑)
楽しみにしていらっしゃる気持ちは、よーーーーーく分かりますから、私もあまり厳しくは言えないんですよね(笑)
・ストレス
ストレスは交感神経を刺激して脈拍を早め、末梢血管を収縮させますから血圧を上げます。
ストレスによる血圧上昇は、強いストレスじゃなくても日常生活の中でも頻繁に起こっています。
よくある例が白衣血圧症と言われるものですね。
家庭で血圧を測っても正常なのに、病院で測ると高めに出る・・・というアレです。
病院という緊張する環境がストレスになって血圧を上げるんですね。
血圧というのは、これほど簡単に上がり下がりするものなんです。
昔、白衣血圧症の話を看護師さんとしている時に
「ここの看護師さんって皆キレイですもんね。だから患者さんの血圧が上がるんじゃないですか?」
って軽いジョークのつもりで言ったら、次の日には「真田さんはチャラい」と噂が広まった苦い経験があります(笑)
・睡眠不足
最近では、睡眠不足も高血圧の原因になると報告されていて、睡眠時間が5時間未満の場合、高血圧のリスクは1.7倍になるそうです。
「スタンフォード式最高の睡眠」という書籍で、著者のスタンフォード大学睡眠生体リズム研究所の西野精治博士が提唱する
「睡眠の黄金の90分」では、
眠り始めの90分が一晩のうちで最も深い眠りに入り、ここを上手く作れればグッスリ眠れると説明されておられます。
また、この西野精治博士がテレビで語っていた、グッスリ眠る為のポイントは、深部体温を下げると眠りに入りやすいというもので、深部体温を下げる食べ物は、キュウリとトマトだそうです。
最近は野菜が高いので、高くつくかもしれませんね(笑)
健康診断で高血圧と言われる人が7割?高血圧の原因と対策! まとめ
1 最高血圧と最低血圧とは?
・最高血圧
心臓が血液を押し出すため縮まって、
血管への圧力が最高にかかっている状態の血圧。
・最低血圧
心臓が血液を押し出さない時に緩んで、
血管への圧力が最低になった状態の血圧。
2 高血圧の原因
本態性高血圧症(原因がよくわからない)
・運動不足
・塩分の過剰摂取
・喫煙
・肥満
・飲酒
・ストレス
・睡眠不足
二次性高血圧(病気など特定の原因がわかっている)
・腎臓の病気(腎血管性高血圧、腎実質性高血圧など)
・先天性の病気(大動脈縮窄症、Liddle症候群など)
・副腎皮質の病気(原発性アルドステロン症 、クッシング症候群 等)
・膠原病(高安動脈炎など)
3 高血圧への対策
・二次性高血圧
病院で治療する
・本態性高血圧症
高血圧の原因である各項目を改善する。
勘違いしないで頂きたいのは、高血圧自体が怖いんじゃなくて、高血圧から合併する
脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)
狭心症
心筋梗塞
慢性腎臓病
大動脈瘤
といった病気が怖いんです。
更に、寒い季節には入浴時に急激な温度変化で起こる
”ヒートショック”
により、脳出血などを発症する例が非常に多くなります。
今でこそ、便器は暖房便座になっていますが、昔は便器に座ると「ヒヤッ」っとしてびっくりしていました。
40代以降の方には分かると思います(笑)
この「ヒヤッ」がヒートショックを起こして、便所で倒れるという患者さんが多かったですね。
あと、高血圧・高脂血症・高血糖が3つ揃うと
”死の三重奏”
と言われ、確実に寿命を短くします。
運動や食事や嗜好品など生活習慣を見直して、高血圧だけじゃなく全身の健康を守って下さいね♪