不妊強制、違憲性問い初提訴!
「国に人権踏みにじられた」
「旧優生保護法のもと、知的障害を理由に同意なく不妊手術を強制され、救済措置も取られていないのは違法として、宮城県内の60代の女性が30日、国に慰謝料など1100万円を求める訴訟を仙台地裁に起こした。原告側によると、憲法が定める幸福追求権を奪ったとして優生保護法の違憲性を問う訴訟は全国で初めて。」
と、いう記事が朝日新聞で報じられました。
この旧優生保護法とはいったい何でしょうか?
この記事は、障害者への差別として、どんな問題を示唆しているのでしょうか?
あくまでも私的な観点から語ってみたいと思います。
目次
旧優生保護法とは?
優生学上の見地から不良な子孫の出生を防止し、
母体の健康を保護することを目的として、
優生手術・人工妊娠中絶・受胎調節の実地指導などについて規定していた法律で、
1948年に施行され、
遺伝性疾患やハンセン病、知的障害、精神障害などを理由に
不妊手術や中絶を認めた法律です。
日弁連によると、
全国で手術を受けた約8万4千人のうち、
約1万6500人は本人の同意なく不妊手術をされたという事実があります。
1996年に「母体保護法」に改正され、優生手術の規定は廃止されました。
別の側面として、
戦後の混乱期における人口急増対策と、
危険な闇(やみ)堕胎の防止のため、
人工妊娠中絶の一部を合法化した法律で、母体を守るためにできたものでもありますが、
ここで問題なのは、
「優生学上の見地から不良な子孫の出生を防止」という部分が、
障害者への差別を公に認め、障害を持った方は、
“不良(出来損ない)な人間”
だと謳っている事です。
遺伝性疾患やハンセン病、知的障害、精神障害などを負った方が子供を産まないよう、
不妊手術を認めていたわけですが、
“不良な遺伝子を残さないようにする”
という意味で不妊手術が行われていたようです。
それも、本人の同意もなく、
親戚や民生委員が親を説得して
不妊手術を受けさせた人数が1万6千人も居たという、
考えられない出来事です。
どんな人が障害者?
厚生労働省の障害者基本法では、
「障害者」とは、身体障害、知的障害又は精神障害があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。
と定義されています。
「社会生活に相当な制限を受ける」方々だからこそ、みんなで助けましょう!という意味の定義ですが、
「社会生活に相当な制限を受ける」事を邪魔だと考える方も多く存在します。
以前、お付き合いのある障害者の方が、
健康な方が駐車場の障害者枠に駐車している事に対する意見をSNSにあげたところ、
同意して下さった方が大多数でしたが、ごく一部では、
「障害者枠があるから他の駐車スペースが狭くなる」
「障害者とか関係ないでしょ」
「障害者が一人前に車に乗るんじゃない」
「俺たちが払っている税金のおかげで生きていけてる人間が偉そうなこと言うな」
などと、ひどい事をわざわざリツイートする人が居ました。
障害者権利条約では、障害者を
「長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な障害を有する者であって、様々な障壁との相互作用により他の者と平等に社会に完全かつ効果的に参加することを妨げられることのあるもの」
と、定義していますが、
日本国民として、大多数の方々と価値観を共有できる障害者と呼ばれている方と、
ネット上で個人を特定できない事を利用して、わざわざひどい言葉で他人の心に傷をつけようとする人間の
どちらが、
他の者と平等に社会に完全かつ効果的に参加することを妨げられているのでしょうか?
自分も歩く事が大変なのに、お年寄りに駐車場を譲ってあげる身体障害者とされている人と、
自分さえ良ければいいと、我が物顔で障害者駐車場に車を停めて平然としている、どう見ても健康な人と、
どちらが、
他の者と平等に社会に完全かつ効果的に参加することを妨げられているのでしょうか?
自分が、お腹がグーグー鳴るほどお腹を空かせているのに、
お腹を空かせて鳴いているネコに自分の弁当を丸ごと与えて、
ニコニコ微笑んでいる知的障害とされている人と、
あくまでも個人的な事情でイラついて、
腹立ちまぎれに何の罪もないネコを蹴飛ばす健常者と呼ばれる人の
どちらが
他の者と平等に社会に完全かつ効果的に参加することを妨げられているのでしょうか?
他の者と平等に社会に完全かつ効果的に参加するという部分が、
仕事という意味にしても、
サボる事ばかり考えていて、常に仕事をどう誤魔化すか?に全力で頭を使っている健常者と呼ばれている人と、
与えられた仕事を、飯を食う事も忘れて一心に取り組んでいる知的障害者とされている人と、
どちらが
社会に完全かつ効果的に参加しているのでしょうか?
旧優生保護法上で言うところの、
“不良な子孫の出生を防止”
とは、どちらの子孫を残さない方が良いのか?
あなたは、どう思いますか?
障害を持った方々に対する差別
生まれつき障害を持った方々を差別する現実は、現在も根強く残っています。
医療・福祉関係者でさえ、障害者を差別している意識を持っている人間は珍しくありません。
同じ障害者の方々をお世話する仕事仲間でも、陰口でひどい事を言う人間はどこにでも必ず居ます。
障害者の方に触れた後、丹念に手を洗い
「感染しないのはわかっているけど、何か気持ち悪いからさ」
なんて信じられないのを通り越して
怒りの感情さえ湧き上がるような、とんでもない事を言った奴がいました。
病気や障害を理論的に理解し、障害者の方々に常に接している医療・福祉業界の人間でさえこんな状態ですから、
医学的な知識も、障害への理解も、障害者と面識も無い、
一般の方々が持つ、障害に対する認識に期待してはいけないのかもしれません。
というより、“差別”とすら認識せずに、
当たり前の事として”差別”をしている方々も少なくないでしょう。
旧優生保護法には、そんな背景も隠れていて、
実際に不妊手術を薦めた民生員や身内、
不妊手術を専門的に行っていた医師、
そして旧優生保護法を作った官僚や議員・大臣達でさえ、
“差別”という意識は無かったと、関係者は語っています。
障害者の人権を無視していた いま話題の旧優生保護法を知っていますか? まとめ
1 旧優生保護法とは?
優生学上の見地から不良な子孫の出生を防止し、母体の健康を保護することを目的として、優生手術・人工妊娠中絶・受胎調節の実地指導などについて規定していた法律。
障害者という理由で、約1万6500人は本人の同意なく不妊手術をされたという事実がある。
問題なのは、「優生学上の見地から不良な子孫の出生を防止」という部分が、障害者への差別を公に認め、障害を持った方は、“不良(出来損ない)な人間”だと謳っている事。
2 どんな人が障害者?
厚生労働省の障害者基本法では、「障害者」とは、身体障害、知的障害又は精神障害があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者と定義されている。
優しく思いやりがあって一生懸命な障害者と呼ばれている方々と、自己中心的で他人に迷惑をかけても平然としている健常者と呼ばれる人間と、どちらが日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者なのか?
3 障害を持った方々に対する差別
生まれつき障害を持った方々を差別する現実は、現在も根強く残っている。
旧優生保護法には、“差別”という意識は無かったと、関係者は語っている。
ここまで読んでいただいたように、障害者と呼ばれている方々への差別は、
まだまだ根強くあります。
現在の障害者と判断される価値観は、生産性や社会的な負担といった、
明らかに物質的な側面から見た価値観です。
AIやロボット工学、IT技術などの先進技術の進化は、
物質的な部分を機械に任せられる日を
必ず我々にもたらしてくれます。
機械が、物質的な価値観を大きく変えた後に重視されるのは、
機械には持てない、生物としての
「優しさ」
「思いやり」
と、いった精神性になると思います。
旧優生保護法は、古い時代の法律で、
当時は当たり前だと思われていた価値観が変わってしまったからこそ、
母体保護法という法律に、今は姿を変えました。
これから更に時代が変わって、
今の、当たり前だと思われている価値観が変わってしまった時、
障害者という定義そのものが変わると思います。
一日でも早く、そんな日が来る事を心から望んでいます♪