障害者の奥様を介護しているご主人から
「ウチの奥さんが障害者だという事を会社に知られたくないから、年末調整には障害者控除は入れてないんだよね」
というお話しを伺いました。
個人情報を公表したくない時は、控除をあきらめるしかないのでしょうか?
会社に個人情報を知られずに控除を受ける方法は無いのでしょうか?
目次
障害者を扶養するという現実
障害を持たれた方を扶養されているご家族の問題として、
「家族に障害者がいる事を知られたくない」
「介護しなければいけない家族がいる事を会社に知られたくない」
というものがあります。
これは、
「恥ずかしい」とか「カッコ悪い」とか
という問題ではなく、
地域的に差別を受けたり、社会生活にも影響するという
キレイ事では済まない問題が現実にあるからなんです。
年末調整の話も、相談されたわけではなく、雑談の中で出てきた話ですが、
実は、珍しい話では無いんです。
還付金と引き換えに、個人情報が会社に漏れる事を嫌がるお気持ちは、
よく分かりますので、
お節介として、ご本人に確認を取った上で税理士さんに聞いてみましたところ、
「自分で確定申告すれば大丈夫ですよ」
という答えが返ってきました。
ご本人と一緒に確定申告の説明を聞いた内容を、同じ悩みを持つ方々へお教えしたいと思います。
障害者控除を受けなかったら、いくら損する?
障害者控除の控除金額は、
・一般障害者…所得税27万円、住民税26万円
・特別障害者…所得税40万円、住民税30万円
・同居特別障害者…所得税75万円、住民税53万円
※特別障害者とは、身体障害者手帳1・2級、精神障害者保健福祉手帳1級、療育手帳Aの判定を受けている方で、それ以外は一般障害者です。
※同居特別障害者とは、特別障害者である納税者自身や納税者の配偶者、または納税者と生計を一にする親族のいずれかと、常に同居している人を指します。
と、なります。
仮に、
障害者控除なし:年収500万円の会社員で健康な奥さんと同居している。
障害者控除あり:年収500万円の会社員で特別障害者の奥さんと同居している。
というケースで源泉徴収を比較すると、
表のように、
61,200円も節税となりますので、
申告しなければ非常にもったいない金額です。
障害者控除の確定申告
会社員の方の場合、
納め過ぎた税金から障害者控除の分を受け取るだけですから、
「還付申告」として、申告します。
通常の確定申告は、基本的に2月16日~3月15日の期間内に行わなければなりませんが、
還付申告なら、確定申告期間は関係ありません。
還付申告の期間は翌年から5年間でゆとりを持った期間が設定されています。
郵送で提出する場合、期間内の消印があればOKです。
所得税の障害者控除
①確定申告書を作成する。
まず、税務署へ行き、確定申告書をもらって来るか、
国税庁のWEBページからダウンロード・印刷して記入します。
国税庁:確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等ダウンロードページ
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/yoshiki01/shinkokusho/02.htm
確定申告書の書き方自体は、ググっていただくとして、割愛させていただきます。
障害者控除の記入例としては、上記で挙げた、
「会社員が特別障害者の奥さんと同居している」
と、いうケースです。
用紙は確定申告書Aを使います。
確定申告書A 第1表
引用:国税庁
赤枠の欄が障害者控除の金額を書く欄です。
記入例として、
会社員が特別障害者の奥さんと同居している場合の「同居特別障害者」の控除額75万円で記入していますが、
ご本人もしくは同居家族が、一般障害者の場合は、27万円
ご本人が特別障害者の場合は、40万円
で、記入します。
確定申告書A 第2表
引用:国税庁
画像の赤枠内に障害者の方の氏名を記入します。
※本人または配偶者控除・扶養控除を受ける家族に限ります。
※特別障害者または、同居特別障害者に該当する場合は名前を○で囲んで下さい。
②税務署に行って申告する。
・記入した確定申告書
・源泉徴収票
・障害者手帳(療育手帳)のコピー
・銀行口座の情報
・印鑑(認印でOK)
を持って、お近くの税務署で申告して下さい。
住民税の障害者控除
まず、
・今年の1月1日時点で障害者認定を受けている。
・前年の所得が125万円以下
という、この2つの条件を両方とも満たしていれば、住民税は免除(非課税)となります。
この条件を満たしていない場合は、
・一般障害者…住民税26万円
・特別障害者…住民税30万円
・同居特別障害者…住民税53万円
の控除が受けられますが、
確定申告すれば自動的に控除となり、特に手続きは必要ありません。
ただし、市区町村は毎年5月頃に、住民税の確認用通知書を会社に送付しますので、
そこに記載された障害者控除の適用を受けた情報を会社側が見る可能性があります。
個人情報の漏洩が心配な方は、お住まいの市区町村役所で確認された方が良いかと思います。
障害者として税金の控除は受けていますか 会社員も確定申告で障害者控除が受けられる? まとめ
1 障害者を扶養するという現実
障害者が家族に居るという事を知られたくないという事には、地域的に差別を受けたり、社会生活にも影響するというキレイ事では済まない問題が現実にある。
障害者控除は確定申告で控除できる。
2 障害者控除を受けなかったら、いくら損する?
年収500万円の会社員で健康な奥さんと同居しているケースと、特別障害者の奥さんと同居しているというケースで源泉徴収を比較すると61,200円の節税となる。
3 障害者控除の確定申告
「還付申告」として申告。
3.1 所得税の障害者控除
①確定申告書を作成する。
会社員として還付申告する場合は用紙は確定申告書Aを使う。
※記入例は、本文を参照。
②税務署に行って申告する。
・記入した確定申告書
・源泉徴収票
・障害者手帳のコピー
・銀行口座の情報
・印鑑(認印でOK)
を持って、お近くの税務署で申告する。
3.2 住民税の障害者控除
・今年の1月1日時点で障害者認定を受けている。
・前年の所得が125万円以下
という、この2つの条件を両方とも満たしていれば、住民税は免除(非課税)となる。
条件を満たしていなくても、確定申告すれば自動的に控除となり、特に手続きは必要ない。
ご自身が障害者であったり、ご家族に障害者を持つ方が、
個人情報として、その事実を公表したくないという気持ちはあって当然です。
「自分の家族の事を隠したいなんてとんでもない」
などと、きれい事を言われる方もいらっしゃいますが、
誰にでも触れて欲しくない事はありますし、
それは、当事者じゃないと絶対に分かりません。
私の視点からでは、
「家族を守りたいという強い愛情」
があるからこそ、家族を傷つける可能性のある個人情報が洩れる事を恐れるのは当然だと思います。
だからこそ、
「守れるものは自分で守る!」
という気持ちをこれからも大事にして下さいね♪